2011年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

名前:藤沢 和哉
所属:政策・メディア研究科
学籍番号:81025349
学年:修士2年
E-mail:fujikzy@sfc.keio.ac.jp

研究課題名:StepNavi 歩行速度ナビゲーションシステムの研究

1.概要

近年,iPhoneやAndroidなどのスマートフォンの普及により,歩行ナビゲーションサービスの利用が増加している.歩行ナビゲーションサービスでは,スマートフォンのGPS機能を利用し,位置を測位することにより,ユーザの現在位置に応じたルートナビゲーションを行っている.ユーザにはルートナビゲーションの使用時,目的地に到着するという目的だけではなく,目標の時間までに間に合いたいという目的も同時に存在することが多い.しかし,現在のルートナビゲーションでは,間に合うかどうかについては全てユーザにまかせられている.そのため,どの程度のペースで歩けば間に合うのかが分からなく,結果的にペースが遅すぎて目標の時間に間に合わなかったり,反対に時間を気にして急いだ結果,早く着きすぎてしまうという問題が起こる. そこで,本研究ではユーザを目標の時間に間に合わせることを目的とし,どの程度ユーザのペースが遅いのか,または速いのかという情報を提示するシステム,StepNaviを設計・実装した.ユーザの位置情報からリアルタイムに歩行速度を検出するとともに,目標の時間に間に合うために必要な速度を提示することで支援を行う.速度情報に関しては数値で表示するだけでなく,直感的に理解できるインタフェースを工夫した.これにより,ユーザは即座にペース調整の必要性を判断できるものとなっている.

2.新規性

本研究では図に示すように,既存のルートナビゲーションの上に,速度ナビゲーションを提案する.今までの目的地入力によるルートナビゲーションだけでなく,到着時間を入力することで速度ナビゲーションを実現し,ユーザに必要な速度を可視化していくことを目指す.ユーザの歩行中の速度を「現在速度」,目標の到着時間までに間に合うために必要な速度を「必要速度」,ユーザが現在速度で歩き続けた場合の到着時間を「到着予想時間」として定義する.

3.実装

3.1基本機能

図1にStepNaviの動作画面を示す.また,図2に提案したグラデーションによるインターフェイスを示す.赤から青へのグラデーションバーが表示され,黄色の球体がユーザの現在速度を表す.また,中央の白色部分が必要速度を表し,左側の赤色部分はペースが遅く,右側の青色部分はペースが速いことを表す.そのため,中央より右側に球体があれば,目標の到着時間より早く到着ができる.左端は速度0m/s,右端は必要速度の二倍の速度を表しているが,必要速度は残り距離と残り時間により算出されるため,相対的に値は変化していく.

3.2周辺施設の推薦

本システムは,現在速度が必要速度に間に合っていないユーザや,現在速度が速すぎるユーザに対して.最適なペースを提示することが第一段階の目的である.それと同時に,目標の到着時間までに余裕がある場合,周辺情報を推薦することを第二段階の目的としている.これは,目標としていた到着時間より早く着きそうな状況下に,立ち寄りたい場所が途中で視野に入ることも考えられるからである.
図に周辺情報の推薦画面を示す.ユーザの現在速度が必要速度を上回った場合,現在速度から到着予想時間を算出し,入力された到着時間との差を余剰時間として定義する.周辺情報の推薦は,余剰時間が閾値以上の場合,カフェやコンビニなどの施設を推薦する機能である.ユーザの現在地と余剰時間を考慮して,周辺施設を表示する仕組みとなっている.現在はカフェやコンビニに施設を限定しているが,駅ナカ施設やトイレなど,短時間で利用できる施設をユーザが設定することも可能である.

4.システム設計

本システムは速度ナビゲーションを行うクライアントサイドと,周辺情報の検索を行うサーバーサイドによって構成されている.にシステムの構成を示す. クライアントサイドはAndroid端末を利用し,GPSにより位置を逐次測位する仕組みとなっている.取得した位置をパラメータとして,Google maps APIにリクエストを行い,レスポンスのルート情報を利用することで速度ナビゲーションを実現している.サーバーサイドはクライアントから送信される位置情報と到着予想時間をもとに,Yahoo Open Local Platform APIにリクエストを行い,周辺情報をレスポンスとして取得し,必要な周辺情報のみを抽出してクライアントに送信する仕組みとなっている.

5.今後の予定

今後、以下の学会において本研究の対外発表を行う.

[1]Kazuya, F., Yasumura, M., StepNavi : A Navigation Support System by Visualization of Walking Speed, International Conference on Information Visualization Theory and Applications 2012, Feb 2012.
[2]藤沢和哉, 安村通晃, StepNavi : 歩行速度ナビゲーションシステムの開発, 情報処理学会 インタラクション2012, Mar 2012.