2011年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

政策・メディア研究科 修士2年 田近拓也

市民活動を誘発する観光ガイド事業の形成過程

 

ニューツーリズムへの移行によって、地域が観光の担い手として期待されている。ニューツーリズムの中のまち歩き観光は、街を巡るという特性のために、新たな観光資源を掘り起こす必要があり、街案内をする必要もある。従って、まち歩き観光は、市民が主体的に関わる必要がある。

本研究では、まち歩きの成功事例と言われる長崎さるく博及び長崎さるくの事例研究を行った。長崎さるく博とは、2004年の長崎市観光2006アクションプランに基づき、市民主体をコンセプトとし、ガイドによるまち歩きをメインコンテンツとした2006年開催の地方博覧会である。2004年からプレ・イベントとして施行され、2006年に博覧会を、2007年以降はイベントはなくし、長崎さるくと名を改めガイドによる街案内を実施している。

本事例は、通常地域観光ガイドが担い手となるまち歩きとは、市民が長崎市観光2006アクションプランを検討したことと、市民が長崎さるく博という地方博覧会でまち歩きを作った点が異なっている。このような、長崎さるく博における過程、及びその過程によって現在顕在化している効果について調査を行った。

結果として、学さるくの一部とNPO法人長崎コンプラドールの活動が長崎さるく博をきっかけに創出した活動であると分かった。学さるくは、「ガイドが持つ地域とのつながりを活用できる」という効果があり、NPO法人長崎コンプラドールは「他の地域へ街歩きのノウハウの提供する」と「地域活動の実践者とのつながりの創出」という効果があった。そして、それらは長崎さるく博という地域観光ガイド以外にも多様な市民が観光に関わることができる設計がなされていたことが要因にあり、長崎市と長崎市観光において活用可能な人的資本を増やす働きがあったと、考察した。