大規模災害時におけるユーザーイノベーションの役割

政策・メディア研究科 博士課程1年 清水たくみ

メールアドレス:takumis@sfc.keio.ac.jp



研究概要

 本研究は、未曾有の大規模災害時におけるユーザーイノベーションの重要性を指摘するものである。大規模災害においては政府/企業などの通常のオペレーションが制限される中で、市民/ユーザー主導によるイノベーションが、被災地のピンポイントなニーズに応えうる復興の鍵となる取り組みであることを示す。この仮説の検証においては、東日本大震災および2011年に発生したタイの大洪水をケースとして設定する。現地フィールド調査およびネットサーベイを併用し、政府/企業と比べたユーザーの貢献を浮き彫りにする。

また、東日本大震災の事例に関しては、復興支援に関わるプラットフォームも分析対象とし、「不特定多数の参加を促進するプラットフォームの設計指針および設計者の役割」に関する知見抽出を行った。具体的には、Google Person Finder、sinsai.info、Toksyの3事例を対象に、ケース・スタディによる帰納的な仮説構築を実施した。本調査結果から、「協働過程を『収集/入力/検証/発信/二次利用』にモジュール化することで、不特定多数の参加が促進される」という仮説を導出した。モジュール化により、ユーザーの限られた時間/スキルでも貢献可能となる小規模・低難度のタスクが整備され、五つのモジュールそれぞれに対する参加可能性が開かれた。加えて、プラットフォーム上で扱う情報の「複雑性」と「流通方向性」に応じて、「採用可能なモジュール構造」および「設計者とユーザーの役割分業」が変化することを指摘した。

 
キーワード

ユーザーイノベーション、大規模災害、協働、プラットフォーム



学外における関連成果発表

Takumi Shimizu and Jiro Kokuryo, “Promoting Participation with Five-Stage Platform Modularity: Case Studies on Recovery after Great East Japan Earthquake”, SIG Information Quality 2012 “Quality Information in Organizations and Society”, The United States, December 2012.