2012年度森基金研究成果報告書

 

エチオピアにおける歴史的環境生成とその衰退化問題に関する研究

 

政策・メディア研究科博士課程EG

岡崎　瑠美

 

背景

 

本研究では、歴史的な背景を有する発展途上国の都市を対象として、���j的街区を構成する中心市街地が陥っている危機的状況を遺産学、都市社会学的な視点から解明し、その改善の糸口を探ることを目的としている。研究対象としてエチオピアを取り上げ、遺産を擁した歴史都市の中心市街地を比較検討し、歴史的環境と市街地の衰退化問題を総合に検討する。エチオピアでは環境の劣悪化が進行する一方で強固な地域コミュニティが存続しており、それが地域の持続性の要となりうることに着目する。遺産の価値を建築的側面からだけではなく、社会的文脈で把握し住民を含めたアクションプランを起こして行くことが今後の持続可能なプランに必要不可欠である。

 

研究対象・目的

 

東アフリカに位置するエチオピアを対象とし、遺産を擁した歴史都市の中心市街地を比較検討して、歴史的環境と市街地の衰退化問題を総合に検討することを目的とする。エチオピアは古代アクスーム王国以来の長い歴史を有し、アフリカの中で唯一独立を保ち続け、固有の文化を誇るユニークな国である。エチオピア正教とイスラームが混在し、多数のエスニック・グループが共存しているが、本研究では異なった背景を有する複数都市をケーススタディ都市として取り上げ、それらを比較検討することにより、エチオピア全体の特徴や問題点を明確化する。対象とする都市はメケレ（ティグレイ州、19世紀の宮廷都市）、ゴンダール（アムハラ州、近世の都）、ハラール（ハラール自治区、イスラーム交易都市）であり、筆者がこれまでに実施した研究をベースに更なる問題発見とその問題解決の指針の提示を目指す。以下に、本研究の目的を挙げる。

1. アフリカ都市の歴史性の評価（都市空間の復元的研究、および歴史的環境評価）

2. 貧困と居住に関する知見の獲得（住民特性の把握、および社会的問題の発見）

3. 中心市街地の衰退化問題の解決に向けた指針の提示（地域コミュニティとの連携）

 

2012年度活動成果

 

論文

・ Rumi Okazaki, “A Study on the Formation of an Imperial City in Tigray, Ethiopia,

at the Turn of the 20th Century: Construction of Mekelle During and After the Reign of Yohannes IV”, 日本建築学会計画系論文集［査読あり、投稿中］

・Teshale Atsebaha, Solomon Tesfamariam, Equbay Tesfay, Rumi Okazaki, Riichi Miyake, “Formation and Development of the Outskirt of Mekelle, Aynalem”, 18th International Conference of Ethiopian Studies, Dire Dawa, Ethiopia, 1 Nov. 2012

・Riichi Miyake, Rumi Okazaki, “A Study on the Foundation of Gunda Gundo Monastery and its Construction Process, Several Facts from Observation on the Masonry Construction and Details”, 18th International Conference of Ethiopian Studies, Dire Dawa, Ethiopia, 1 Nov. 2012

 

学会発表

・Rumi Okazaki, "Integrating the History of the Old Town of Mekelle into Mekelle University Museum", Development of Museums and Heritage in Africa- Opportunities, Challenges, and Collaborations, Mekelle University, Mekelle, Ethiopia, 6 Nov. 2012

・Rumi Okazaki, Riichi Miyake, “Transformation of the Central District of Gondar, Ethiopia”, 18th International Conference of Ethiopian Studies, Dire Dawa, Ethiopia, 1 Nov. 2012

 

シンポジウム発表

・岡崎瑠美,「エチオピアの歴史環境と居住環境問題をめぐって」, 藤女子大学グローバル・ネットワーク・セミナー, 第三セッション：東アフリカの地域問題, 藤女子大学, 札幌市, 日本, 2012年11月25日

・岡崎瑠美,「コーヒーとチョコレート、その歴史的景観」, 国際都市フォーラム札幌2012「食と文化のランドスケープ」, アスティ45ビル, 札幌市, 日本, 2012年6月16日

 

大学講義

・“Poverty of Cities”, Keio University, Fujisawa, Japan, 19, 23, 26 Jun. 2012

・“Introduction to Ethiopia”, Fuji Womens University, Sapporo, Japan, 14 Jun. 2012

・"A Study on Historical Cities in Ethiopia: Harar, Gondar, Mekelle", Addis Ababa University, Addis Ababa, Ethiopia, 4 Apr. 2012