2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金 成果報告書

小型実物体に特化したX線CT再構成のためのデータ取得法と前処理に関する研究
森田正彦
慶應義塾大学 政策・メディア研究科 後期博士課程3年


1. はじめに   2. 提案手法   3. 成果   4. おわりに  

1. はじめに

「外殻の形状情報と高精細でフォトリアリスティックなテクスチャ情報、および内部の構造情報を有した小型実物体の3次元コンピュータモデルを短時間に生成可能とする」ことが本研究プロジェクトの目的である。本目的である「短時間に生成可能」を達成するために、X線CT装置を用いた3次元の形状計測を検討する。
従来X線CT装置は工業・製造業・医療の分野で主に利用されており、データの取得時における条件・目的は本研究プロジェクトの条件・目的と必ずしも一致しない。そこで、本研究が扱う小型の実物体に特化したX線CT装置による断層画像再構成のためのデータ取得法と前処理に関する研究を行う。

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2. 提案手法

X線CT装置による3次元形状計測を行うにあたり、工業・製造業・医療と異なり、本研究プロジェクトが扱う物体には下記のような特徴がある。
① 小型の実物体であるため、重量が少ない。
② 静止物であるため、計測において時間の制限が無い。
そこで高精度ステッピングモータを用いて、視点ごとにおいてX線透視画像を多数枚取得し、"穴"が発生しにくいように再構成後の分解能を向上させるための前処理を行う。
CT再構成において参照するX線透視画像は砂嵐上のノイズに埋もれた状態として観測される。胸部X線検査などの利用では、観察時間を多く取り、積分された画像で診断を行うが、この手法をX線CTにおいて適用すると再構成後の解像度が低下し、"穴"発生の原因となる。本研究では、複数枚の透視画像を取得し、統計的にノイズを除去することで解像度の低下を回避することを狙った手法を構築することを目的とする。本提案手法は計測時においては従来手法に比べ時間を要するが、"穴"埋め作業のコストが低減されるため、結果的に高精細三次元コンピュータモデルの生成を短時間に実現できる。また、本研究の成果は上記①②の条件においてX線CT装置の利用法として他分野への波及効果が期待できる。

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3. 成果

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4. おわりに

森泰吉郎記念研究振興基金研究助成金の支援の下、装置試作・計測ソフトウェア開発と口頭発表を行った。 口頭発表においては、画像電子学会 研究奨励賞を受賞(表彰式は2013年6月の予定)する結果を収めた。

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