2012年度森基金 研究成果報告書

小さなRNAと相互作用する分子の新規探索法の開発

政策・メディア研究科 修士課程2年
先端生命科学(BI)
村上 慎之介
Login ID: mushin
Student ID: 81125332


研究概要

細胞内における小さなRNA分子(small RNA)は,細胞のガン化や発生・分化,ウイルス感染等と密接に関わる極めて重要な分子である.近年,我々の研究グループをはじめ様々な研究グループからコンピューターを用いた網羅的な遺伝子探索により大量のsRNA候補が発見されているが,その機能は特定されていないものがほとんどである.それは,これまで特定のRNA分子を精製して機能を調べる手法が確立していなかったことに由来すると考えられる.そこで本研究ではモデル生物である大腸菌を研究対象として,SrisawatとEngelkeが2002年に発表したストレプトアビジンと結合する塩基配列(S1配列)を用いて機能未知のsmall RNAの精製法を確立し,その機能を同定することを目指した.
本研究では新原温子氏(2010年度政策・メディア研究科修士課程卒)が2011年に発表した大腸菌における229種の新規sRNA候補(ref)を,機能同定の対象として扱った.これらは大腸菌細胞内での発現が観測されているものの,その機能は不明である.まずは229種の中から2種類のsRNAにS1配列を結合した塩基配列をクローニングし,精製実験を行ったところ,特定のRNA分子を精製することに成功した,また,本実験系を既知のsRNAに適用することで手法の有用性を確認することができると考えられるが,既知のsRNAであるRyhBにS1配列を融合したRNA分子も精製することに成功した.しかし,既知のsRNAと結合しているはずの標的mRNA分子が共精製されていなかったため,今後は精製の条件を再検討する必要がある.また,sRNAと標的mRNAが結合したままの状態で精製を行うためには,RNaseを部分的に欠損した大腸菌株を用いることも有用であると考えられる.これらのことに留意することで,本手法の改善が望まれ,sRNAの機能同定手法として有用なものになることを期待したい.

※本報告書はweb公開であるため,論文発表前の具体的なデータを除いて作成した.