2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

<加齢と食生活による腸内細菌叢の変動についての考察>

政策・メディア研究科 修士課程1年
先端生命科学(BI)
石井 千晴
Login ID: chiharu
Student ID: 81224074


【研究概要】
腸内細菌は体内で、消化吸収、免疫、物質生成など非常に重要な役割を担っている。腸内細菌の7~8割は難培養性であることから、培養を介した研究では腸内細菌叢の全容を解明することは非常に困難だが、近年難培養性の微生物に対してもゲノムレベルで研究を行うメタゲノム解析が可能になってきた。その結果、腸内細菌叢と肥満の関係が示唆されるなど腸内細菌の健康への関与が様々な観点から明らかにされつつあり、腸内細菌は私たちの生活と密接に関わる研究分野として注目を集めている。本研究では、更なる基礎データの拡充のため、異なる年齢や食生活の条件下で腸内細菌叢がどのような構成や変動をしているかについて、難培養性の微生物も含めて明らかにしていきたい。そのため、食事やフローラの種類が異なる4群のマウス糞便を時系列で採取し、メタゲノム解析、及びメタボローム解析を行った。また、先行研究ではバクテリアに着目している研究が多いが、本研究では古細菌も含めて研究対象とすることで、新規腸内古細菌の探索と、腸内のバクテリアと古細菌の関係性についても検討した。
【結果】
通常食群と高脂肪食群の腸内フローラについて多変量解析手法の一つである判別分析を行った結果、高脂肪食群でPrevotellaceaeおよびLachnospiraceaeの割合が多く、通常食群ではPorphyromonadaceaeの割合が多いことが明らかとなった。また代謝物プロファイルから、通常食群においてアミノ酸やビタミンB6生成に関わる代謝物が蓄積していることも示唆された。腸内フローラと代謝物質の加齢に伴う変動パターンの類似性を相関解析により算出した結果、通常食群と高脂肪食群ではその変動パターンが異なることが示唆された。また、糞便から古細菌の16S rRNAのシークエンスを試みたが、有用なデータを得ることはできなかった。
【詳細】 2012年春学期タームペーパー 2012年秋学期タームペーパー

【学会発表】(3件)
「Evaluation of the effects of age and diet on the gut ecosystem via multiple omics」(Poster) Probiotics 2012 (OMICS Group)・San Antonio (U.S.A.) 2012/11/19-21
「食事変化や加齢に伴う腸内細菌叢変動のメタゲノム解析」(Poster)第一回 マトリョーシカ型生物学研究会 2012/7/20-22
「食事と加齢が腸内環境に与える影響についてのマルチオミクス解析」農芸化学学会 口頭発表予定。2013/3/24-28

【その他の成果】
Probiotics-2012にて開催されたStudent Poster Competition(詳細)で最優秀賞を受賞した。その成果は山形新聞(記事詳細)や慶応義塾大学発行の三田評論(1月号山上広場)などに掲載された。

森泰吉郎記念研究振興基金は学会参加に必要な費用としても使用させて頂き、このような成果を得ることができました。ありがとうございました。