2012年度森基金成果報告書

定量リン酸化プロテオミクスを用いたシロイヌナズナにおけるチロシンキナーゼの探索


慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程2年 海老敬行
先端生命科学(BI)
学籍番号: 81124250
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概要

タンパク質は可逆的なリン酸化と脱リン酸化による分子スイッチとして経路内タンパク質の活性状態を制御している。リン酸化と脱リン酸化は翻訳後修飾の一つで、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、セリン、スレオニン、チロシン残基のいずれかにリン酸基を付加する反応はリン酸化、触媒する酵素はキナーゼと呼ばれ、この反応により荷電状態や立体構造が変化する。逆に3種類のアミノ酸残基からリン酸基を外す反応は脱リン酸化、触媒する酵素はホスファターゼと呼ばれる。植物のゲノム上には高等動物に見られるような典型的なチロシンキナーゼ (TK) は存在しないが、大規模なリン酸化プロテオミクスの際にチロシンリン酸化タンパク質もヒト同様の割合で分布していることが報告されたことにより、植物においてもTKが存在し、ヒト同様にシグナル伝達機構の必須因子として機能している可能性が示唆された。 本研究では、シロイヌナズナのリコンビナントキナーゼ及び培養細胞由来の基質タンパク質を反応させるin vitro試験を行い、リン酸化プロテオミクスによりリン酸化されたタンパク質を同定することで、キナーゼ個々のリン酸化特性のプロファイリングを目的とする。加えて、取得したリン酸化特性情報から、これまでに報告されていなかった植物TKの探索を行う。ヒトと同じ割合でリン酸化基質が分布する植物において、TKを同定することに成功すれば、植物シグナル伝達経路の包括的な解明へと大きく貢献すると考えられる。詳細は添付の全文報告書に示す.
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今年度の実績

学会発表(ポスター)
・"チロシンキナーゼ同定に向けた植物におけるタンパク質キナーゼプロファイリング"
第10回日本プロテオーム学会2012年大会, 横浜
Takayuki Ebi, Keiichiro Nemoto, Nayuki Sugiyama, Masaru Tomita, Tatsuya Sawasaki, Yasushi Ishihama.