2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金

研究成果報告書

 

研究課題名:ラオスにおける参加型土地管理の課題および今後の可能性

 

氏名:益本貴史

 

所属:政策・メディア研究科修士課程2

 

 

■研究概要

 本研究の目的は、ラオスにおいて政府が参加型土地森林管理を実施しているにも関わらず、森林率が回復しない原因を解明することである。さらに、本研究は現在のラオスの土地森林管理の状況を、政府・外国企業・現地村人の3つの視点から明らかにした上で、ラオス政府の参加型土地森林管理の戦略を探る。

 

■研究成果

 本研究では、ラオス南部サワナケート県においてフィールドワークを行った。

 第一に、サワナケート県の政府職員に対し、聞き取り調査および資料収集を行った。調査により、参加型土地管理の現状を把握することができ、また政府職員の参加型土地管理制度に対する理解も確認した。

 第二に、サワナケート県にて活動を行う日本国際ボランティアセンター(JVC)のサワナケート事務所を訪問し、職員に対する聞き取り調査および資料収集を行った。JVCはサワナケート県において参加型土地管理に関する活動を行っており、プロジェクトサイトの視察にも同行した。その際、現地村人への聞き取り調査も行った。

 第三に、現地の外資系企業に対する聞き取り調査および資料収集も行った。ゴムやユーカリ林のプランテーションを行っている企業の社員にインタビューを行い、参加型土地管理制度に対する理解度や、実際のプロジェクトでの参加型土地管理制度の役割を把握することができた。

 その他に、タイに本拠地を置くNGOであるTowards Ecological Recovery and Regional Alliances (TERRA)に対し、ラオスにおける参加型土地管理制度に関する聞き取り調査を行った。

 

サワナケート県におけるゴムプランテーション

 

(左側が水田、右側がゴムプランテーション)

 

■修士論文

 フィールドワークから得たこれらの成果を元に、修士論文の執筆を行った。論文の執筆は英語で行い、タイトルは「Participatory Land and Forest Management in Lao People’s Democratic Republic: An Analysis of Policy and Practice(ラオスにおける参加型土地森林管理:政策と実態の分析)」である。以下が論文要旨である。

 

■論文要旨

 本研究の目的は、ラオスにおいて参加型土地森林管理を実施しているにも関わらず、森林率が回復しない原因を解明することである。さらに、本研究は現在のラオスの土地森林管理状況を、政府・外国企業・現地村人の3つの視点から明らかにした上で、ラオス政府の参加型土地森林管理の戦略を探る。

 研究の背景としては、1970年には70%であった森林率が2011年現在41%にとどまっており、ラオス国内における急激な開発が原因であると考えられる。ラオス政府は法律や政策を施行することで対応したが、状況は未だに変わっていない。

 本研究では、サワナケート県においてフィールドワークを行った。フィールドワーク中は政府・外国企業・現地村人に加え、サワナケート県を活動拠点とする日系NGOに聞き取り調査を行った。これらの調査により、現地村人が土地森林管理に実質的には参加していないことが明らかとなった。

 本研究は、上述の3つの視点から分析を行うことにより、当研究分野に貢献するものと考える。また、法制度と政策の分析のみにとどまらず、参加型土地森林管理そのものに内包される問題を明らかにすることが、本研究の独自性といえる。