2012年度森泰吉郎記念研究振興基金 成果報告書

 

学校ウェブサイトを通じた情報発信が保護者の信頼感に与える影響

 

政策・メディア研究科修士課程1

81224949 伴地駿介

 

1.概要

本研究の研究課題は、「なぜ保護者の信頼が得られる学校とそうでない学校があるのか」というものである。この問いに答えるため、筆者は学校の情報発信に注目した。その中でも特にウェブサイトに光をあて、「学校ウェブサイトを通じた情報発信が充実しているほど、保護者の信頼感は高まる」という仮説を検証する。

 近年、地域参加型の学校運営を実現する上で、保護者との信頼関係を築くための学校広報(school public relations)が重要であるとの認識が高まっている。学校ウェブサイトは学校広報において重要なツールの一つであるが、日本の公立学校では運用状況にばらつきが生じている。一方、尾道市立土堂小学校のように、学校ウェブサイトを通じて地域内のコミュニケーションを活発にしている事例もある。

学校ウェブサイトを通じた情報発信が保護者の信頼感に与える影響については、国内の実証研究がほとんど蓄積されていない。今後の学校経営の指針を示すためにも、学校ウェブサイトの有効性を検証することが必要である。

 

2.活動報告

 今年度は、上記の仮説検証を行うためのケース選択も兼ねて、以下の2つのプロジェクトに参加した。

 

) J-KIDS大賞2012

・・・HPを保有する全国の小学校(特別支援学校、在外日本人学校を含む)を対象とした日本最大の小学校HPコンテスト。審査ボランティアとして全国の小学校のHPを網羅的にチェックすることで、WEBを通じた学校の情報提供について実態を把握した。

 

)ともしびプロジェクト

・・・被災地の小中学校が保有しているブログを子どもたち自身が更新し、コメントを通じて学校間交流を行う「子どもブログ活動」を支援する取り組み。子どもの記事にコメントを返したり指導案を作成したりすることで、子どもが学校の情報を発信することの効果や、実際に子どもたちを指導する上でのハードルについて実態を把握した。

 

3.今後の展望

 今年度の活動を通じて把握した実態をもとに、仮説検証を行うケースを選択していく。また、教育委員会や学校管理職の意向が各学校の広報体制に与える影響の大きさが明らかになったため、それらに働きかける方策も同時に考える必要がある。具体的には、各学校の広報ニーズを可視化するためのアセスメントツールの開発などが挙げられる。

 

4.文献

金子郁容, 渋谷恭子, 鈴木寛(2000). コミュニティ・スクール構想  岩波書店

金子郁容(2005). 学校評価―情報共有のデザインとツール  筑摩書房

町田智雄,豊福晋平(2008). 組織的・継続的な学校ホームページ運用のための体制構築 日本

教育工学会研究報告集, 155-160.

豊福晋平(2008). 学校ウェブサイトの利用者意識調査  日本教育工学研究報告会

豊福晋平(2010). これからはじめる 学校広報  GLOCOM