2012 年度 森泰吉郎記念研究振興基金 成果報告書

研究課題名:「在宅療養患者のためのセンサ連携服薬支援システム」

氏名:小澤みゆき
学籍番号: 81224269
政策・メディア研究科 修士課程1年
所属プログラム: CI
プロジェクト: モービル広域ネットワーク


研究要旨

本研究は、慶應義塾大学Auto-ID Lab.において進められている、双方向ライフログ服薬アドヒアレンスプロジェクトに関する研究である。 本プロジェクトの最終的な目的は、在宅医療における患者の主体的な服薬行動を促進することである。 超高齢化およびユビキタス化する社会において、高齢者の ICT 環境のデザインは重要な課題である。 高齢者の中でも何らかの病気を患っている患者の生活に対する、小型化・ネットワーク化した計算機を用いた支援は、未だ普及していない。 在宅医療と呼ばれる、患者が慣れ親しんだ自宅におけて治療を受ける医療形態の拡充のためには、ICT を利用した遠隔医療技術は必要である。 そのため本研究では、在宅医療における薬の服薬状況の質の向上を目的に、センサ連携ライフログシステムの構築を行う。 センサ連携ライフログシステムとは、処方された薬を入れる箱に、小型のホールセンサと無線センサネットワークを取り付けることで、薬の開閉データを遠隔モニタリングするシステムである。 研究者や訪問看護師らは開閉データを閲覧することができ、服薬状況に関するメッセージや絵・写真を、患者宅のデジタルフォトフレームに送信する。 これによって、患者へのフィードバックを可能にする。

アプローチ

本研究は仮説検証型の研究であり、以下の3つの仮説に基づいて進る。
仮説1 服薬の見える化が有効である
仮説2 服薬情報の患者へのフィードバックが有効である
仮説3 システムの経済的な維持性を確保することができる
この中で仮説2の適切なフィードバックをかけるため、音声によるセンサノードからのアクチュエーションを考えている。 また「台所に半日以上人がいなければアラートを出す」「お手洗いの電気が30分以上ついていたら知らせる」などのセンサノードのステータスを、ユーザが任意に定義して記述できるようなシステムの構築を考えている。

今年度の活動と今後の予定

春学期は、現状の薬箱システムの安定運用のための改良を行った。 具体的には、システムの中核をなすホストコンピュータで動作させているプログラムの書き換えを行い、より長い時間システムが動作するようにした。 また薬箱に搭載されているハードウェア用の電池の消費の速度を検証する実験を行った。 また6月には情報社会学会年次研究発表大会に参加し、卒業論文の内容の一部の発表を行った。
秋学期からは、薬箱システムの実証実験を大阪府吹田市にて開始し、現在も継続している。 本実験において私は直接設置はせず、遠隔でのデバッグや設定の修正などを行った。 また、9月7日に東京工業大学にて行われた第14回DSPS教育会議にて、『在宅療養患者と医療者をつなぐ双方向服薬支援システムの試作』という発表を行った。 デモンストレーション&ポスター発表で、普段関わりの薄い高専の先生など、様々な方にご意見をいただくことができた。 次に、10月23日に中国江蘇省の無錫市にて行われたCJKワークショップとIoT2012に参加した。 Auto-IDラボの日中韓台湾の合同ワークショップであるCJKでは、“A networking management for ZigBee and 3G segments in medication support system”という題で発表を行い、ベストプレゼンテーション賞を受賞した。またInternet of Things2012では、参加者として主にアプリケーションやヘルスケアの分野を中心に聴講した。 そして、11月22・23日に六本木東京ミッドタウンにて開催されたORF2012にも出展した。 今後は、先述したシステムのプロトタイプ実装を行うとともに、 引き続き実証実験を継続し、長期間のデータを得たいと考えている。