2012年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書
研究課題名「東南アジアにおける天候デリバティブの可能性」

所属:政策・メディア研究科 修士課程1年 学籍番号:81224726
氏名:高山 俊一 Emailcircasin@sfc.keio.ac.jp

 

本年度の研究において、私は研究テーマの変更を行った。そのため、本報告書は、“主題の再検討に至った経緯”と“現在の研究目的・研究概要”についてまとめることにする。

1.主題の再検討に至った経緯

当初は世界各地での地球温暖化による異常気象の増加から農業分野の依存度の高い東南アジアに焦点を当て、適応策の1つである天候デリバティブの可能性を探ることを目的とした。

しかし、東南アジアとの比較のため調べていた日本、その中の神奈川県が土砂災害における被害量が多いことを学んだ。この学びから、自国の問題解決が、途上国の問題解決の糸口になると考え、主題の変更に至った。

2.研究目的 (研究テーマ:神奈川県の土砂災害に対する補償制度の役割)

以上の再検討を踏まえ、本研究は以下のように設定した。研究の背景、全体像は下記“研究概要”に記載する。
・土砂災害に対する行政・民間の補償制度のあり方を整理し、問題点を浮き彫りにする。

・土砂災害発生後の、官民の新しいセーフティネットのあり方を提示する。

 

3.研究概要

近年、世界各地で地球温暖化による異常気象が頻繁に発生している。その異常気象の1つとして、集中豪雨がある。日本ではゲリラ豪雨と呼ばれるこの異常気象は、土砂災害の発生確率を上げるリスクも合わせ持つ。例えば、近年だと、昨年9月末に起きた京浜急行の脱線事故が上げられる。この土砂災害に焦点を当てた時、現在の日本の防災対策は、@法律A保険B公共工事による防災整備で賄われている。しかしながら、上記でも記載したとおり、異常気象が増加する今後、法律・保険・公共工事による防災整備の新しい仕組みづくりが求められる。

そこで、本研究は、特に法律と保険制度の現状を精査し、今後起こりうる問題点を探る。そして、今後起こりうる問題点への解決案を提示する。具体的には、関東圏内で最も土砂災害の発生量が多い神奈川県を対象地域に選定し、文献調査を基に行政機関・民間の保険企業へヒアリングを行う。そして、ヒアリング結果を通じて得られた問題点を整理することで、行政・民間企業で対策することが難しい今後の問題点を浮き彫りにする。最後に、この浮き彫りになった問題点から解決案を文献調査・行政・民間企業とのヒアリングを通じ再検討し、解決案をまとめる。

進捗状況は、行政の法体制・民間企業の保険制度の仕組みについて文献調査を終え、行政・民間企業へのヒアリング準備を行っているところである。

過去の先行研究は、土砂災害の危険予測の手法開発や危険予測マップの作成といった、土砂災害発生以前の対策方法を提示するものが多い。その一方で、土砂災害発生後の法律面・保険面を包括的に捉え問題点を浮き彫りにする論文は少ない。その意味で本研究は、今後の土砂災害の発生が上昇することを踏まえた、土砂災害発生後の官民の新しいセーフティネットの確率に対して1つ土台となることを企図する。