政策・メディア研究科

大崎恵介

 

研究課題:「鬼ごっこ運動プログラム」が身体能力と知覚スキルに及ぼす影響

 

概要

本研究は「鬼ごっこ運動プログラム」が児童の身体能力と知覚スキルに及ぼす効果を検証する。鬼ごっこは「遊びの王道」と呼ばれており、瞬発力、俊敏力、持久力、判断力、チームワークなどスポーツを行うに必要な要素が多く含まれる。そのため幼稚園や小学校の体育のカリキュラムにはもちろん、サッカーやラグビーなどのチーム・スポーツにおいても積極的に練習に取り入れられている。鬼ごっこのような楽しむための遊びをDeliberate Play と呼び、スポーツ選手キャリアの基礎となることが言われている。しかしDeliberate Play、特に鬼ごっこと運動能力の直接的な関係を調べた研究はない。そこで本研究ではスポーツ鬼ごっこをベースとした「鬼ごっこ運動プログラム」用いて鬼ごっこの効果を検証する。この研究を行うことでさらに効果的な鬼ごっこの遊び方の提案が可能になる。そして基礎体力作りを目指した運動プログラムの作成や様々なスポーツへ応用した練習の発展に貢献する。

 

内容

元町・中華街にある児童クラブに通う児童を対象に身体能力の向上を目的とした鬼ごっこ運動プログラムを実践した。調査は7月から8月の間に各クラス1時間半を週2回、5週間によって行わせた。実践した鬼ごっこプログラムは複数の鬼ごっこにより構成されている。対立関係の項目で大別すると「1対1」「1対多」「多対多」の3種類を用意し、さらに「人取り」「宝取り」「場所取り」の3種類に細分化していった。プログラムの前後に体力テストを行い、反復横跳び(瞬発力)、立ち幅跳び(跳躍力)、片足立ち(バランス能力)とシャトルラン(走能力)の4種類のテストで各能力を計測した。また、運動量を調査するために各クラスランダムで5名抽出し、歩数計を持たせた。

 

成果

体力テストに関しては反復横跳びのみ有意な差が認められプログラム後に向上した。また立ち幅跳びと片足立ちで向上の傾向が見られた。目視レベルではそれらのテストを遂行する際の動作の質に違いがみられたため、より効率的に体を動かす感覚を身につけられたと考えられる。また認知的な側面では、有能感やチーム内での役割の理解、仲間とのコミュニケーションの面で変化が見受けられ、遊び(ゲーム)内でより意欲的にかつ協調のとれる行動が行えるようになったと思われる。また、ゲームの質にも変化がみられ、規則性のある動きを獲得していった。よって鬼ごっこをより複雑にしていくことで、より高度なスポーツに必要なスキルが身につくことが示唆され、同時にトレーニング的な観点から価値のある遊び(ゲーム)である可能性が高いことが示唆された。

 

今後の予定

これらの結果を踏まえ、現段階ではこの同クラブでの調査を続けておりスポーツ的観点からの児童の観察を続けている。加えてゲームとしての鬼ごっこの基礎的調査を目的とし鬼ごっこ、特にスポーツ鬼ごっこの競技性に着目し、同競技内で発生する行動から予想される学習効果や競技自体の位置づけを山梨県のスポーツクラブにて行っていく予定である。これを行うことでスポーツから見た鬼ごっこの価値を再認識し、よりよいトレーニングの構築を目指す。