2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

 

政策・メディア研究科 修士課程1 (HC)

鈴木 梨沙

 

研究課題名

語彙記憶の仕組みを利用する新しい外国語学習法の開発と効果の検証

 

研究概要

 外国語学習では、発話時に瞬時に単語が想起されにくいという問題点や授業時に教科書や辞書を片手に発話する場面が多く見られ、中級者でも外国語の単語同士の記憶の関連付けをうまく行えていないという課題がある。そこで本研究では、外国語と母語訳を対にした従来の記憶方法よりも、単語間の関係を可視化することによって学習しやすくすることが、実践型のアウトプットに有効ではないかと考えて、このようなマインドマップ形式の単語学習が外国語の活用能力の向上に有効であることを示す。実際にマインドマップ手法を参考にした語彙学習教材「d-Mind」を開発して、ドイツ語アウトプット能力と語彙想起能力の向上を目指し、有効性を示す実験的研究を行う。

 

研究成果

 今年度は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスのドイツ語履修者を対象にして、d-Mindを使用した学習効果の調査実験を行った。具体的には、6名の学生を対象に、マップのテーマ(中心となる概念)が提示された実験用アプリケーションを用いて、時間内に単語マップを作成する課題を1週間ごとに4回行い、ドイツ語の想起能力の向上を調査した。また実験の初めと終わりに、テーマについての発話の録音を行い、「d-Mind」による学習のアウトプット能力への効果を検証した。実験期間は約1ヶ月であった。その結果、作成されたマップの変化は多少見られたが、アウトプット能力への影響は見られなかった。これは、今回の実験の期間が1ヶ月と短期間であったため大きな変化が見られなかったのではないかと考えられる。

 

 

今後の予定

 今回の実験から得られた知見を元に実験計画を修正し、今後は学習者の思考過程の変化を中心により長期的な調査を行う。実験に用いるマップのテーマを絞り、授業の進捗状況と関連させて履修者の学習の変化を調査・分析し、修士論文としてまとめる。