2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金「研究育成費」研究成果報告書

 

日本の政府開発援助政策における途上国との連携

―南南協力支援からネットワーク型の協力へ―

 

政策・メディア研究科(プログラム:GR

修士課程2

野口和博(81125060

 

0.森泰吉郎記念研究振興基金申請時研究題目

  日本の南南協力支援が地域連携に果たす役割について

 

1.研究概要

本研究は日本の国際協力政策の中でも近年、注目されているネットワーク型の協力に関する研究である。ネットワーク型の協力は大きく、「既存のネットワークを活用」する協力と「新たにネットワークを形成」する協力の2つに分けることができる。本研究は、特に後者の「新たにネットワークを形成」する各国連携の協力における支援のあり方を、被援助国のキャパシティ・ディベロップメント(CD)に対する日本の支援に着目し、事例を用いて分析を行った。具体的には、ネットワーク型の協力の成功事例として取り上げられるアフリカ理数科教育域内連携ネットワーク(SMASE-WECSAStrengthening of Mathematics and Science Education- Western, East, Central and Southern Africa)を事例として考察を行う。

分析の結果、被援助国同士のネットワーク化を促進する要素として、@被援助国同士の共通課題の認識、A日本側のネットワーク化への体制づくり、Bキーパーソンの存在、の3点が重要であることが明らかになった。

 これまでのネットワーク型の協力は「既存のネットワークを活用」する協力と「新たにネットワークを形成」する協力とが一括りに語られてきたが、本研究において、これらを類型化し、「新たにネットワークを形成」する協力における支援のあり方を明らかにしたことで、今後のネットワーク型の協力の実施の一助になると考える。

 

2.本研究の課題

 ネットワーク型の協力を実施するにあたり、援助効果の効率性を高めるために途上国間での知見・経験、ヒトの交流があることが望ましい。しかし、本研究では、ネットワーク形成の中心となる国に対する日本の支援のみを分析の対象としており、前述した情報や人材交流の活発化に対する日本の支援までは分析の射程に入っていない。しかし、本研究はそのような途上国間の交流に至る初期段階での日本の支援を明らかにした。そのため、今後は、途上国間の交流に対して、日本がどのような支援をしていくのか分析する必要があると考える。

 

3.活動報告

・慶應義塾大学SFCGRプログラム及びBBLSでの研究発表

・関係者へのヒアリング調査

・修士論文執筆

 

おわりに

森泰吉郎記念研究振興基金を頂き、修士論文を執筆する際の諸経費として役立てさせていただいた。当初、森泰吉郎記念研究振興基金を申請する際、ケニアでの現地調査を目的としていたが、パソコンの故障に伴う諸経費を捻出するため、当初の使途以外のことに使用させていただいた。

本研究の実施にあたり、森泰吉郎記念研究振興基金の関係者の方々から御支援をいただいたことを、この場を借りて改めて御礼を申し上げます。