2012年度 森基金 研究成果報告書


高感度リン酸化プロテオーム解析システムによる

クマムシの乾眠移行メカニズム解明


先端生命科学 (BI)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

 修士課程1年 長谷部百合子


Abstract

 乾眠を行う生物種は完全に乾眠するまで時間を有するものが多く,生物は極限環境においてタンパク質などがダメージを受けて機能障害を引き起こすと考えられている.ネムリユスリカの幼虫は乾眠の移行に48時間以上かけて,水の代わりに生体成分などを保護するためトレハロースやLEAタンパク質などを大量に合成し,高い乾燥耐性能力を獲得しているがクマムシでは乾眠トレハロースの蓄積がない.ヨコヅナクマムシ (Ramazzottius varieornatus) は約30分で完全な乾眠を行い,mRNAレベルの遺伝子発現において活性状態と乾燥状態で差異がみられない.この乾燥移行時の短さにより,タンパク質の発現制御よりも,翻訳後修飾によってクリプトビオシスに移行していることが推測される.そこで本研究では,クマムシが乾眠状態に移行する際に,どのタンパク質のどの部位のリン酸化が変動しているかを定量的かつ経時的に把握し,乾眠移行に関与するタンパク質の同定とそのメカニズムを解明することを修士の目的とする. 乾眠移行時の経時的変化を見るには多検体の測定が必要だが,クマムシのサンプル数の確保が困難であることから,微量のサンプルでリン酸化プロテオームデータを取得する必要がある.



Keywords : クマムシ, 高感度リン酸化プロテオーム解析システム


2012年度森基金成果報告書