2012年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

学籍番号:81025769

政策・メディア研究科 修士課程2年 生田 泰浩



0.
森泰吉郎記念研究振興基金申請時の研究題目
「ウクライナ民主化改革の再検討」


1.
はじめに
 今回、採択していただいた基金によって、ポーランドでのフィールドワークを行うことが出来た。調査は201293日から10日の期間に行い、自身の
研究対象であるウクライナとの比較において大変有意義な知見を得ることが出来た。今後の研究に活かしていきたい。


2
.研究内容

2-1.研究題目(修士論文題目)
「ウクライナ民主化改革の再検討」

2-2.研究概要

 本研究は、ウクライナにおける民主化について、その障壁となった要因を明らかにすることで、再検討を行うものである。
 2004年の「オレンジ革命」(参考資料B)を経て誕生したユーシチェンコ政権は、目標としていた民主化を進められずに短期間で瓦解に至った。そこで、「なぜ民主化を進められなかったのか」、「何が民主化の障壁となったのか」、という疑問に基づいて分析を行った。

2-3.
分析手法

@文献調査
 先行研究の整理(ウクライナ政治社会、民主化についての各分野)

A各種資料
 政府機関、シンクタンク、新聞、現地調査(ウクライナ、ロシア、ポーランドで実施)でのインタビュー等の1次資料の参照、引用


3.
本研究の課題
@分析の視角
 民主化の中心には国民(諸個人)があるべきであり、国民あるいは地域の視点とその反応、展開の考察が不可欠。
A他地域との比較考察
 旧ソ連あるいは東欧の国々との比較を行うことで、ロシアの影響力の大小による国家状況の違い、あるいはソ連の歴史の有無による政治社会の土壌の差異などが観察される可能性。
B民主化理論へのフィードバック
 「ユニエイト型」国家や連邦制国家(中井 1998)、多極共存型民主主義理論(レイプハルト 2005)といった概念適用の可能性の考察。

→今後行うべきA他地域との比較考察の必要性を考慮して、今回のフィールド対象にポーランドを選択した次第である。

4.今後の研究計画

@民主主義理論に基づく分析
 レイプハルトの提唱した「多数決型民主主義」と「合意形成型民主主義」という類型化(レイプハルト、2005)を基盤にしながら、現在の民主主義理論におけるウクライナの現状の比較考察を行う。ここでは、ウクライナのみならず、旧ソ連諸国、およびすでにEUに加盟している東欧諸国との比較を加えることで類型化していく。
A民主化の課題(共通性を考慮しながら)

 ウクライナ政治の課題と民主主義および民主化へのアプローチについて、特に問題とされる人権抑圧(ティモシェンコ問題)、民族・言語の差別(ロシア、クリミア・タタール)、メディア支配などの具体例を取り上げながら、ロシア、ポーランドとの比較を中心として分析を行う。
B民主化への取組み
 オレンジ革命前後にはEU政府や米国、OSCE(欧州安全保障協力機構)、UNDP(国連開発計画)をはじめ、国際財団やNGOによって積極的な民主化支援が行われ、現在も継続中のものも多い。将来的なEU加盟を視野に入れたさまざまな民主化条件が提示される一方で、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンとの関税同盟への参加はその選択を迫られている。これらの各プロジェクトの変遷と現状を整理しながら、民主化への取組みを考察する。
C社会発展のために
 課題と取組みの分析を通して、ウクライナ国家・社会の発展に必要な構造改革について、新しい社会運動、ソフト・パワー、パブリック・ディプロマシーなどの役割を含めて検討する。

5.
おわりに
 今回、森泰吉郎記念研究振興基金をいただいたことで、有意義に研究を進めることができた。本当にありがとうございました。今後も森泰吉郎記念研究振興基金によって得られた知見を活用し、研究を進めていきたい。