オープン開発を駆動するデータと支援ツール

政策・メディア研究科 博士課程2年 清水たくみ

Email:takumis[at]sfc.keio.ac.jp



研究概要

本研究は組織が保有するデータを自由に活用できる形式で広く一般に公開する「オープンデータ」政策に関して、どのような推進体制/プラットフォームを整えることでオープンデータを活用した開発コラボレーションを促進することができるか、について分析を実施した。

研究の背景として、現在企業経営のみならず公的機関や地域コミュニティなどにおいても、組織内に閉じないコラボレーション/イノベーションのオープン化が重要性を増している。加えて、オープンなイノベーションの源泉を捉える際には、ソフト/ハードなどの技術に加えて、データや情報そのものの価値が高まっている。公的セクターは保有するデータをオープン化することにより、より良い市民サービスを提供することを志向している。営利企業においても、APIの公開によるエコシステムの形成など、データ連携による事業拡大が加速化している。オープンイノベーションの中でも、外部の知見をいかに取り込むかに関する方法論は蓄積されつつある。一方で、「組織内に蓄積されたデータを公開することで、公開側の組織がどのように果実を得るか」という点に関しては、公的/私的領域双方で検討の途上である。

そこで本研究では、近年オープンデータ政策の実施に積極的な自治体を取り上げ、事例研究法に基づいて研究を実施した。具体的には横浜市、千葉市、鯖江市の3都市について、担当者への詳細な聞き取り調査、各自治体が主催する開発イベントなどのフィールド調査などを行い、具体的にどのような手法を用いてオープンデータ活用を促し、そのためにどのような推進組織体制を用意し、どのような成果へと結びつけているかについて検討した。

本調査から得られた知見の代表的なものは、「公開される組織内データの種類や量、およびデータを介した外部コミュニティとの開発コラボレーションの形態は、当該組織が有する組織構造に大きく規定される」という事実である。横断的組織を有する企業は包括的/戦略的なデータ公開行動を取り、外部との連携においてもコミュニティ基盤拡大を志向する傾向が見られた。一方で個別部門が独立性をもって行動する企業は、特定部門によるスピーディなデータ公開が促され、外部連携においても特定組織と緊密に連携する傾向が見られた。

今後、本研究で生まれた知見を学術的な成果としてアウトプットするとともに、実践への適用も目指していきたい。

 
キーワード

オープンデータ、オープンイノベーション、組織構造、協働、コミュニティ



関連成果発表

ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム公開シンポジウム『イノベーションのためのオープンデータ』, 慶應義塾大学SFC Open Research Forum, 2013年11月22日.

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