2013年度森泰吉郎記念研究振興基金による研究助成 成果報告書

研究課題名:モンゴルにおける気候変動早期適応システムの開発

 

所属:慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程 EGプログラム

代表者:大場章弘  

 

研究背景

 モンゴルは気候変動の影響で、ゾドと呼ばれる大雪害や冷温による家畜の大

量死がもたらされている。ゾドによる気候変動リスクを低減するためには早期

適応指示が届く仕組みが末端行政区域である町村(ソム)スケールで求められ

ている。実際に可能な早期適応の内容は植生の生産力や地形による積雪の状況、家畜市場の規模や遊牧地からの近接性など町村ごとに異なる。そこで本研究は遊牧民が早期適応行動を実施する際に必要な情報の種類を調査し、それら変数を格納したデータベースを構築し、PC および携帯電話でソム行政および遊牧民に伝えるための早期適応指示システムを構築することを目的とする。これは気候変動適応において緊急に求められている研究であり,モンゴル国の実情に即したツールとして現地政府と研究協力者から高く期待されている。

 本研究ではTexas A&M Universityが開発したGLEWSGlobal Livestock Early Warning System)のデータおよびノルウェー気象研究所の気象情報をソースとしてデータベースを開発した。GLEWSは植物量の予測を306090日単位で実施し、干ばつ予報をWebサイト上で公表しているが、大雪害など冬のゾド警報には至っていない。また、モンゴル国内では週間天気予報がテレビ・ラジオ配信されているが、スケールが粗い。そこで本研究では現地調査で明らかにした現地住民のニーズである過去の家畜被害状況、GLEWS データを利用した付随する気象情報、その他GIS データや衛星観測データをPC、携帯電話で遊牧民、ソム行政へ配信するシステムをWebGIS によって開発し、実際に遊牧民と行政に送付することでどのような適応行動をとるかを調査する。

 

1.システム構成・内容

1.1 システムの構築方法

 本研究の方法は図1に示す通りである。まず、現地住民のゾド適応行動に必要な情報のニーズや、情報を受け取った現地住民が実行可能な適応オプション、そして現況の情報伝達の方法について現地調査を実施する。次に、開発したデータベースから情報のニーズに合わせてデータ提供が可能かどうかを評価し、現地住民・行政といったステークホルダーごとに伝達媒体であるインターフェイスを開発する。最後に、開発されたシステムの動作実験を実施し、その後現地住民が情報を受け取った事によってどのように行動したか、冬期にインタビュー調査を行う。

 

図1 ゾド早期適応システムの構築方法

 

1.2 システムの構築

1.2.1 システム環境

システムの構築環境は表1の通りである。Webの配信方法としてApacheによる開発環境を利用した。全域の様子が分かりやすい衛星画像や地図を使用するため、マッピングインターフェイスのプラットフォームにはGoogleMaps for Flashを採用した。ここで、本研究で扱うプラットフォームとは、矢野ら(2004)が文中で定義するようにアプリケーションフレームや実行時に必要となるソフトウェアを指す。そのマッピングインターフェイスの開発言語はActionScriptを用い、GoogleMaps for Flashで公開されている、Google マップを Flash アプリケーションに埋め込むための Flex 開発者向け API (Application Program Interface) Google Maps API for Flashhttp://code.google.com/intl/en/apis/maps/documentation/flash/ )を利用して開発した。また、ActionScript言語で記述したコードはFlex Builderを用いてswf拡張子のファイルにコンパイルし、swfファイルをブラウザ上で読み込むためにJavaScriptを用いた。マッピングインターフェイスの背景画像にはGoogleMapsで提供される画像に加え、砂漠植林による効果を視覚的に確認するために、データ入力者独自に取得済みの複数の衛星画像データを掲載できるようした。ここでは、衛星画像等のラスターデータや行政区界等のベクターデータの読み込みにオープンソースGISのプラットフォームであるMapServerを使用した。これら複数のGISデータの処理関係はMapFileを用いて記述し、GoogleMapsレイヤにオーバーレイできるようにMapServerCGIを用いて画像化できるMapServerの仕組みを利用して構築した。

また、マッピングインターフェイスを通してデータ入力者側からテキスト・画像データをデータベースへ投稿するため、データ投稿を行うCGIPerl言語で開発した。CGIを通して投稿されたデータはMySQLを用いてデータベース格納し、これを空間データベースとして構築した。空間データベースでは空間スケールごとにデータテーブルを用意してあるため、これらを整理してマッピングインターフェイス上に表示するためにXML形式のテキストを表示するファイルをPHP言語によって構築した。

この開発環境で作られたシステムにおいて、データ入力者はブラウザからGoogleMapsベースのマッピングインターフェイスを通じて、団体の活動履歴や活動場所の位置情報をMySQLデータベースに格納することができる。データ入力者および現地・外部閲覧者はは同じGoogleMapsのインターフェイスを通じてGoogleMapsや所有する衛星画像を背景に、対象地域の空間的位置や活動場所の情報を視覚的に閲覧することが可能である。これにより1つのGoogleMapsのインターフェイスのみを使用することで空間情報を作成・閲覧することができる。

1 開発環境

OS

Windows XP 64-bit Edition

サーバ構築

Apache1.3.33

マップ提供

MapServer 5.2.0

マップ定義

MapFile

データベース

MySQL 5.0.67

使用スクリプト

ActionScript 3.0

JavaScript

Perl 5.10.1

PHP 4.4.2

 

1.2.2 マップシステムの構造

システムの構造を図2に示す。このシステムでは、GoogleMapsインターフェイス上に表示する地図は3つのレイヤから構成される。最下層からGoogleMapsで配信される地図や衛星画像データを表示するGoogleMapsベースマップ(図5中の@)、独自サーバ側で保有している衛星画像等のラスターデータや区域界等のベクターデータをMapServerCGIで構築、配信するMapServerベースマップ(図5中のA)、最上層にGoogleMapsAPIを利用して表現する植林地の位置情報コンテンツのレイヤ(図2中のB)で構成されている。図2のデータベースで管理するデータは最上層レイヤに該当するもので、GoogleMapsMapServerをベースに作成されるものである。また、サーバは日本に設置した。

MapServerベースマップでは、Web地図配信規格を決定する機関Open Geospatial Consortium(OGC)の標準規格であるWMS(Web Map Service)形式で複数のGISデータを一つの画像にして配信できるように配信するよう構築した。GoogleMapsEPSG:900913と呼ばれる地球の形を半径6378137mの球とした測地系、投影法はメルカトル図法の座標系で定義されており、WMSデータを配信するMapServerで定義されている座標系に含まれていない。そのため、GoogleMapsで使用されている投影法へ変換を行うメソッドを提供するパッケージ、すなわちクラスをActionScriptで作成することで対応し、オーバーレイを可能にした。

GoogleMaps作成レイヤはマッピングインターフェイス上で作成したデータやその過程で投稿した位置情報をGoogleMapsAPIを利用して表示する図面である。

これらのレイヤ構成によって、様々な地図および画像データを見ながら、GoogleMapsAPIを用いて空間データを生成することが可能である。また、MapServerベースマップのレイヤではマッピングインターフェイスを通して表示したい画像透明度を設定して透過表示し、GoogleMapsベースマップレイヤとの位置関係を見ながら操作することが可能である。

2 レイヤ構造

1.2.3 データ処理スクリプト

データ処理スクリプトはMapServerを利用した画像データの生成とGoogleMapsAPIを用いたデータ通信に大きく分けられる。図2におけるMapServerベースマップで使用するGISデータは背景画像として使用するため、直接ディレクトリからMapFileによる管理を行っている。このため、GISデータはGoogleMapsインターフェイスを介して呼び出す処理は行うが、属性の変更や地理情報処理など、元データに対して変更等の書き込み処理は行わない形となっている。

GoogleMaps作成レイヤ上で作成したデータは、CGIを通して緯度経度と属性の位置情報をテキスト情報としてMySQLデータベースに投稿する。格納されたデータの変更はマッピングインターフェイスを通してCGIからデータベースに投げかける処理を行う。

投稿して格納されたデータはMySQLデータベースで管理するが、GoogleMapsでデータを表示する際は、2.3で述べたように各階層のレコードが一致するようにソートした結果を階層構造の形式で表現する必要がある。そこで、データベースからの呼び出しはPHPスクリプトを用いてXML形式で表示し、GoogleMapsで表示可能な形にした。

XML形式にする際、実際には次のような形式となった。XMLの構文は表1に示す空間構造と同様、入れ子構造になっており、下記で最上位のタグは<data>となっていて、その中にゾーンを示す<zone>が複数入る形となっている。<zone>にはエリアを示す<area><area>にはブロックを示す<block>が入っている形となっている。タグの終了はタグ名にスラッシュが入ることで示され、<data>は最終行である</data>によって締めくくられる。各タグの<>には属性データが入っており、データベースの各テーブルにおけるフィールド名は=の左辺、データの内容は右辺に示される。実際はデータ量が多いこともあり、ここでは空間の入れ子構造がXMLでどのように表現しているかを簡単に表現するにとどめた。

<data>

<zone zone_id='1' zone_latlng='42.・・・、122.・・・' zone_name='gabou'・・・>

   <area area_id='1' area_latlng='42.・・・、121.・・・' area_name='(gs)' zone_name='gabou'・・・>

      <block block_id='4' block_latlng='(42.・・・、 121.・・・)(42.・・・)' block_name='gsc03' zone_name='gabou' area_name='(gs)'・・・>

      </block>

      <block block_id='3' block_latlng='(42.806120494030075 ・・・>

      </block>

   </area>

</zone>

<zone zone_id='2'・・・>

   <area ・・・>

   </area>

   <area ・・・>

      <block・・・>

      </block>

   </area>

</zone>

</data>

このように広域から狭域へ入れ子構造にすることによって、MySQL上のリレーショナルなデータテーブル構造を階層データ形式で出力し、GoogleMapsインターフェイス上で表示順・検索を実施可能にした。

以上のデータ送受信の方法によって、GoogleMaps作成レイヤ上のデータをデータ入力者側とサーバ側でインタラクティブにデータを通信し、データ入力者側はマッピングインターフェイスのみでの地理情報の管理をできるように構築した。

 

1.2.4 データフロー

 システムのデータフローは調査結果に従い、図3に示す通り遊牧民向け携帯電話システム、ソム長向けPCシステムとしてそれぞれ分けた。現状の遊牧民向け携帯電話の主流は従来型のテキストベース携帯電話であるため、情報はテキストで構成した。さらに、情報の提供範囲を遊牧民のいるソム付近に限定した。ソム長向けシステムでは要望に合わせ、これらの情報をGISで可視化し、さらにモンゴル全域の情報を閲覧できるよう範囲を拡大した。

 ソム長向けのシステムは図3に示すとおり、厳研究室のシステムに直接アクセスする。また、遊牧民向けのシステムは携帯電話会社のサーバが厳研究室のシステムにアクセスすることで、携帯電話会社から配信される。システム提供は慶應義塾大学厳研究室とする。

 

3 データフロー

 

1.2.5 データ配信

 早期にゾド情報を提供するシステムのインターフェイス開発を図4、図5の通り実施した。インターフェイスではこれらの情報を視覚的に得る事ができるようGoogle Maps およびMapServer ベースで開発を行ったが、遊牧民はテキストしか閲覧できない携帯電話を主に使用しているため、現地での地名を使用する等工夫してメールで情報を提供できるよう開発した。

 

1) 携帯端末の情報

・週間天気

ソムごとの週間天気予報(天気、最低気温、降水量)を送付した。情報のソースはノルウェー気象研究所、およびノルウェー放送協会の提供するデータを使用した。

4 携帯電話端末で送信された情報

  日ごとの牧草推定量

Biger Sumでモニタリングされている3ポイントの日ごと牧草量推定量、および1970年以降の同日における平均牧草量を送付した。情報のソースはTexas A&M UniversityおよびNational Agency for Meteorology and Environmental Monitoringの提供するデータを使用した。

 

2) PC用の情報

 PC用でソム長に送付するシステムには、次の図5のような情報を送付する。対象ソムでは2013124日にインターネットが開通したため、早急な詳細詰めが必要である。

5 PCでソム長に配信する情報のインターフェイス

 

2. 携帯電話での配信実験

2.1 事前調査

 システムに載せる情報は現場のニーズに合わせるため、2012 9 18 日〜30 日にかけてモンゴルで12 ソム(3アイマグ[県])を対象に遊牧民(N=72)およびソム長(N=5)へのインタビュー調査を実施した。3アイマグはGobi-AltaiOmnogobiTuvで景観区分が異なり、それぞれステップ、ゴビ・砂漠、森林ステップと区分されている地域を選定した。

 調査では必要とされている情報の種類だけでなく、現地の開発システムに対するニーズも伺うことができた。現場で実施可能な適応策としては家畜の早期売却、他地域への放牧エリアの一時的な移動、飼料柵の設置が可能との意見が得られ、その際に必要な情報として近隣の家畜卸売価格、冬期大雪時に移動可能な遊牧エリア、飼料柵に適切な牧草量が見込めるエリアが必要な情報として求められた(図6,7,8)。また、現況のコミュニケーションとして遊牧民携帯電話、ソム長どうしではPCを使ったeメールが主流であることがわかった一方で、緊急時における遊牧民どうしのコミュニケーションは現在ではほとんどないことがわかった。そこで、情報の伝達手段としては遊牧民には携帯電話、ソム長にはPCによる直接のデータ送信が効果的であると考えられる。さらに、現地でニーズのあった情報は開発したデータベース1)からデータの提供が可能であることもわかったが、同時にこれまでモンゴル政府や関係のある研究機関から提供されてきたデータは遊牧民だけでなくソム行政にも届いていないことが明らかになった。

6 ゾドへの適応にどのような情報が必要か

7 何かあった際に誰に助けを求めるか。近隣の遊牧民か、親戚か、あるいはコミュニティか

8 ゾドの情報をもらって何か適応行動を起こす事ができれば、何をするか

 

 

2.2 配信実験

2.2.1  調査・実験した内容

1)  遊牧民の携帯電話端末への情報送信の実験

実験の手順は次の手順で実施した。詳細は各項目で記述する。

@  送付情報とその解説

A  携帯電話への実送付テスト

B  リクエストやアンケート・今後のインタビュー調査への協力願い

 

@  ゾド被害に関する研究資料の提供と説明、解釈方法の事例提供

 実際に当日配布した資料とプレゼンテーションで使用した資料は下記のURLにてダウンロード可能である。

当日配布資料:https://dl.dropboxusercontent.com/u/36022314/Mongolia/ppt/Pilot%20Program/booklet_A4m.pptx

プレゼンテーション資料:

https://dl.dropboxusercontent.com/u/36022314/Mongolia/ppt/Pilot%20Program/presentation130805_2m.pptx

 当日配布資料では、一年に一回しか変わらない情報を紙で印刷し、配布した。主にこれまでの研究で明らかにされた家畜のゾド被害の大きさを示す変数2つ(ヤギ・ヒツジ頭数、および過去のゾド被害頭数)、そしてAimagレベルの5月の家畜生産物に関する市場価格の資料を用意した。ゾドの大きさを示す変数2つはGobi-Altai Aimagのみのスケールと,モンゴル全域のスケールを用意した。ソムレベルのゾドの被害の大きさは保有しているヤギ・ヒツジの頭数、および初年度ゾド(1999-2000の被害頭数が2009-2010に強く影響する)と連続ゾド(1999-2001の被害頭数が2000-2002の各年に強く影響する)が特に関連するというという報告を行った。また、市場価格の資料では肉だけでなくカシミヤ等の家畜に関する生産物全体の5月統計情報をプリントアウトし、それらを参加者全員に配布した。

 プレゼンテーション資料では日々更新される情報を携帯電話で配信するための方法や情報の見方を記載した。日々更新される情報は図4に示された内容を説明した。

 最後に、これらの情報を解釈して行動する方法を例示した。その例示した内容は次の通りである。まず、牧草の情報を見てどこの牧草を冬飼料として準備するかを準備する。同時に、配布資料で提示したヤギ・ヒツジの頭数や過去の被害頭数を見ながら、早期売却や食用殺処分の頭数を検討する。最後に携帯電話で送付される天気予報を見て、ゲル移動や飼料探索の日程を一週間単位で準備する。これらは昨年度のBiger Sumの遊牧民から得たインタビュー結果を基にした例であり、実際の行動は情報を基にして各々判断してほしいと説明した。会場の反応としては早期売却をしたいという声もあがったが、これらの声はアンケート用紙に直接記入していただくよう促した。

 

9 ゾド被害に関する研究資料の提供と説明をDr.Baltを通じて実施した

AppleMark

10 資料は遊牧民だけでなく中心街に住む人を含め幅広い人に提供された

A携帯電話への実送付テスト

 MobicomTelemarketing Systemを用いて実際に情報を送付した。情報は13:0014:0015:00の計3回に分けて送付された。1回目はモンゴル国立大学と慶應大学による情報送信を始める旨を伝えるイントロダクション、2回目は天気予報、3回目は牧草の情報を送付した。3回目はワークショップ終了後の送付であったため確認できなかったが、12回目の送付数は1141件中1回目が324件、2回目が326件となった。

11 実際に遊牧民に送付された携帯電話の画面

3. システム評価アンケート結果

3.1 遊牧民へのアンケート調査

 本ワークショップの遊牧民に対する意識の変化やシステム・情報を利用したゾドに対する期待と情報への比較するため、ワークショップの開始前に事前調査シートを行ったアンケートと、ワークショップ終了後に事後調査シートを使ったアンケート調査を実施した。

@-1事前調査

事前調査シートはモンゴル語ベースで作成し、原票がないため本文書では現時点で掲載できない。また、調査結果は現在翻訳・集計中である。(2013112日集計完了予定)

@−2事後調査

事後調査シートは下記の項目で作成し、Dr.Baltによるモンゴル語への翻訳を依頼した。なお、これらの項目以外には、仮の冬時期の情報をプレゼンテーションスライドで提示し、もし仮にこのような情報が来たらどのように行動するかを会場の参加者に別途白紙を渡して記入していただいた。調査結果は現在翻訳・集計中である。

以下、記入シート(事後調査、翻訳前)-----------------------

Name:                                     Age:                                       MaleFemale

 

Please check your answer with ○.

Q1. Whether was our information in presentation and booklet that we introduced today new or not?

A.   It was new for me. / I already know a half of today’s contents. / I already know all of the information.

Q2. What is the most useful information in today’s our contents.

A. Goat and sheep easily tend to die even rather than other animals by Zud. / Previous Zud damage affects to next Zud damage. / Weather forecast / Market price / current forage (make multiple selections○)

Q3. Do you think whether people can avoid serious damage from Zud by using our mobile phone system and booklet?

A. I expect people can. / I don’t expect anything et al.

If you answered the latter one, could you write down about that reason?

                                                                                                                                                           

Q4. Do you have any plans for coping with Zud this year?

A. I’d like to sell or kill livestock animals more than usual. / prepare forage for winter. / move usual rangeland to other rangelands. / Others (          )

 

Please write down your answers.

Q5. How was the difference of your way for preparation to Zud between before and after today’s training course?

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

 

Q6. Do you have any ideas or methods to dynamically get market price?

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

Q7. Do you need any other requests or useful information in mobile phone system or booklet?

                                                                                                                                                                                                                                                           

 

 

3.2 行政へのインタビュー

1) Gobi-Altai Aimag Governor’s OfficeHead, Tserendash BATZORIG

 本システムをGobi-AltaiBigerソム(郡)で導入実験する旨を伝え、行政所長としては本システムをGobi-Altai県全域でも導入したいという意見を拝受した。これをふまえ、次のような質問を得た。

1.このプロジェクトはいつまでの予定か。どれくらい広げる予定があるか。

2.Gobi-Altai県としてサポートする為に、県と本プロジェクトの協定や契約を結ぶ必要があるか

3.今回はどれくらいの滞在予定か

 

テキスト ボックス: 表2 社会実験後の遊牧民へのインタビュー結果


 


 以上の質問のやり取り以降で、具体的なGobi-Altai県での導入までのプロセスとしては下記の提案を受けた。その際同時に、われわれから「家畜の市場情報をできるだけ高頻度に欲しいが、何かアイデアはないものか」と伺った。経済情報は1週間に一度集計されており、Gobi-Altaiの統計局にお願いすることでデジタル情報を送付することが可能となるが、中央政府からのサポートがあればなお良い。総じて、提案を受けた具体的な流れは次のようになった。

1.所長が当日不在であった知事とその関係者に本プロジェクトを紹介

2Gobi-Altai統計局と契約をし、データ提供の準備をする。

3.中央政府からの認可を得る。できればモンゴル政府と日本政府で協定のようなものを結んでほしい。

2)  Gobi-Altai Biger Soum : governor, ENKHTUVSHIN Jargalsaikhan

 本システムをBigerソムで実験・導入することや、その内容を確認した。またそれ以外の関心ごととして、ソム長は現在ソムに来ている2つの金鉱業の会社に対する規制やモニタリング、企業とコミュニティのコミュニケーションを列挙した。

12  Gobi-Altai県行政所長BATZORIG氏(左端)

13 Gobi-Altai県環境局の方(右端)

14  Bigerソム長ENKHTUVSHIN氏(中央)

4.結論と課題

 本研究はモンゴルの異常気象に遊牧民が適応するシステムを開発し、現地で社会実験を行って、遊牧民が情報に対してどのような行動を期待するかの調査を実施した。具体的には、モンゴルGobi-AltaiBiger村を対象とした社会調査で明らかにした現地住民のニーズを調査し、その調査結果に基づいて過去の家畜被害状況、GLEWS データを利用した付随する気象情報、その他GIS データや衛星観測データをPC、携帯電話で遊牧民、ソム行政へ配信するシステムをWebGIS によって開発し、実際に遊牧民と行政に送付することでどのような適応行動をとるかを調査した。社会実験前と変わらず、遊牧民の考える適応手段としては、われわれの送付する情報を利用して市場での家畜の早期売却や自宅での早期屠殺、夏の飼料準備場所の確保、通常遊牧ルートから外れた場所への冬前移動が挙げられた。今後は冬後の実際にとった彼らの行動を引き続き調査する必要がある。

 技術的な視点としては、Mobicom の配信について、ワークショップ中1141件中324回前後しか届かないという技術的課題が生じたが、現在ではほぼ100%の遊牧民に送付されている。原因はMobicom側からまだ報告が入っていない状況である。また、対象ソムであるBiger Sumではインターネットが開通したため、早急に送付システムの詳細を詰める必要がある。

 また、既に本ワークショップ中にいくつかの住民からシステムで送付する情報にリクエストがあった。具体的には牧草量の範囲を増やしてほしい点や天気予報もなるべく空間的に欲しい、というものであった。本件についてはオリジナルデータを用いた空間推定等で提供の可能性を検討している。

 

謝辞

 本研究は2013年度森基金ほか、環境省環境研究総合推進費(E-1203)、文部科学省科学研究費(24310034)の支援を受けて実施した。また、研究遂行にあたってはモンゴル国立大学に現地調査のサポートをいただいた。ここに感謝の意を表する。