政策・メディア研究科

大崎恵介

 

研究課題: インターバルトレーニングとしての鬼ごっこの可能性

 

 

概要

 

本研究の目的は鬼ごっこのスポーツ的な特性、特にインターバルトレーニングとしての有効性を検証することである。鬼ごっこは「遊びの王道」と呼ばれており、瞬発力、俊敏力、持久力、判断力、チームワークなどスポーツを行うに必要な要素が多く含まれる。そのため幼稚園や小学校の体育のカリキュラムにはもちろん、サッカーやラグビーなどのチーム・スポーツにおいても積極的に練習に取り入れられている。従来では、トレーニングとして鬼ごっこをどう遊ぶのかという提案はなされてきたが、具体的なトレーニング方法や、トレーニングのためのゲームとしての特性は議論されてこなかった。本研究では、鬼ごっこをトレーニングの一部と見なし、その特徴を把握することで、スポーツ鬼ごっこをより良いものへと発展させ、選手の学習効果を高めるための手段として確立し、スポーツ界に貢献することを目的とする。

内容

 

山梨県甲斐市にあるアスレティッククラブに通う小学生を対象に実験を行った。実験はサッカーのミニゲームと「スポーツ鬼ごっこ」という一般社団法人鬼ごっこ協会の開発した鬼ごっこを比較した。被験者はどちらの競技においても初心者のレベルであり、遊びで行う程度であった。実験はスポーツ鬼ごっこの正式なコートサイズを用いて行い、スポーツ鬼ごっこでは公式ルールに則り7対7、ミニサッカーでは最も一般的な4対4で行った。カメラで試合の映像を俯瞰的に撮影し、動画解析ソフトを用いて分析を行った。また、心拍計を用いて特定のプレーヤーの心拍数を計測した。

 

成果

 

両競技とも激しい速度の変移が見られ、緩急のある移動がみられた。これらの競技は常に動き回るものの、停止している時間(例:得点時や相手の動きを伺うときなど)が存在していることから急激な速度の変移がある。特にスポーツ鬼ごっこではボールによる制約を受けず、比較的自由に動き回ることのできる環境が保証されているため、速度の変移がミニサッカーと比べて激しかった。また、同競技はリスタート時やセーフティーゾーンから急激なダッシュを求められるため「休−動」のサイクルが定期的に試合中に見受けられた。心拍数に関しては、試合が行くにつれて緩やかに上昇していく傾向が伺えた。このことから、スポーツ鬼ごっこはインターバルトレーニングよりも有酸素運動に近いことが示唆されたが、速度の緩急や観察レベルでの選手の動きを踏まえると、さらなる調査が必要と思われる。

 

今後の予定

これらの結果を踏まえ、現段階ではこの同クラブでの調査を続けている。今後は調査対象者の数を増やしていくのと同時に鬼ごっこのもつ特性に着目し、遊びの中で発生する行動から様々なトレーニング効果を検証していく。これを行うことでスポーツから見た鬼ごっこの価値を再認識し、よりよいトレーニングの構築を目指す。