2013年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書
色彩を用いて楽曲を表すウェブアプリケーションの開発
政策・メディア研究科 修士1年 原 野枝


■はじめに
本研究は、日常生活で聴取した楽曲の印象について、色彩を選択して表現し、楽曲の色やその体験について自由記述できるウェブアプリケーションを開発することを第一の目的とする。また、それらのデータを蓄積し、日付別だけでなく色合い別や楽曲別にも閲覧できるように開発することで、色と楽曲の関連について分析し、楽曲から受ける印象について考察することを第二の目的とする。我々は生活において日常のあらゆる場面に応じて様々な楽曲を聴取しており、暗黙的に楽曲を使い分けて聴取しているのではないかと考えられる。その使い分けについて調査するために、ただ楽曲の印象について日々記録するのでなく、色という媒体を通して記録することで、楽曲への印象を語りやすくすることを狙いとする。


■分析調査
本研究ではまず、開発するアプリケーションの元となる、日常生活で聴取した楽曲についての記録を一年間取り続けた。これらのデータを記録しながら、各楽曲についての印象を直感で色彩に変換する際、ただ色を選ぶだけの装置では面白くないと考え、ミックスジュースで表現することを考えた。今までの方針である、楽曲を色彩で表現するとなると、様々な要素から成り立っている楽曲をひとつの色彩で表さなければならないため、表現の幅が狭くなってしまっていたと考えた。そこで、ミックスジュースという、様々なモノを混ぜてつくる媒体を選び、楽曲をミックスジュースで表現することを考えた。
実際にミックスジュースを作る際は、1.予め記録してある楽曲の印象の文章を読み、ジュースに入れる野菜・果物をイメージで選定し、2.選定した野菜・果物をどれだけ入れるかという配分を調整し、3.出来上がった後、楽曲のイメージになるよう色彩を少し修正する(野菜・果物の配分量を変えて作り直す)という工程にて行った。また、直感でミックスジュースのレシピを考えるのでなく、楽曲におけるどのような点を、どのようなレシピの配分で表現しようとしたのかということを記述した。これにより、楽曲の持つ性質と色彩や味覚情報を結びつけることができた。

ミックスジュース1参考画像

 図1 実際に作成したジュース①


ミックスジュース2参考画像
 図2 実際に作成したジュース②


■今後について
単に楽曲と色彩を一対一対応で結びつけるのでなく、ミックスジュースという複数の要素からなる媒体で楽曲を表現できたことは進展であった。今後は、楽曲の調性やテンポ、和声など、楽曲のどのような特徴を、どのような媒体に変換しやすく、表現できるのかということを探求することで、ユーザーが楽しく楽曲を表現できるシステムを実装したい。