2013年度 森泰吉郎記念研究振興基金

研究者育成費(修士)活動報告書

 

慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科1年 清水 一匡

 

題目

 NIRSを用いたサブリミナル視覚刺激処理の研究

 

研究概要

 本研究は、NIRS(Near Infra-Red Spectroscopy/近赤外線分光法)を用いた脳機能計測装置を用いる事で、自然言語処理時の人間の脳活動を測定し、得られた値を分析する事で、人間の言語処理システムの解明に寄与する事を目的としている。

 NIRSはその性質上、空間分解能と時間分解能の双方において高い分解能を持つ一方で、皮質以外の領野を測定出来ないという欠点を持つ。しかし、本研究では皮質に属する言語野に焦点を絞って計測を行う事が出来る為、NIRSは適切な計測手法であると考えられる。

 

研究活動

 春学期はサーベイを行うと共に、計測装置を用いない予備実験を行った。秋学期はサーベイを行うと共に、実験刺激作成、及び統計解析の為の環境構築を行った。NIRSはその特性上、統計解析を行う為には大量のデータを処理する必要がある為、必要な能力を持つコンピュータを購入し、大学に設営した。

 

研究進捗

・実験プロトコルの作成

 漢字2文字からなる単語刺激を33msec間呈示すると共に、その前後に順行性・逆行性マスキングを掛ける事で、単語刺激を閾下に呈示する事が出来る。

 この条件においても、予備実験の結果からは、再認試験においてチャンスレベルよりも高い正答率が認められた。その為、所謂「サブリミナル」な刺激を呈示する事は可能であると考えられる。

 本実験においては、単語刺激・非言語刺激・呈示なしの3条件を用意し、ランダムに実験参加者に呈示し、その際の脳活動を測定する予定である。

 

・学会参加

・第16回光脳機能イメージング学会

 開催日時:2013720

 開催場所:星陵会館(東京都千代田区永田町2-16-2

 

 

今後の展望

 本年度に、実験に必要な準備は完全に終了している為、来期は実際に脳機能計測装置を用いた実験を行う予定である。

 また、サブリミナルな刺激のみならず、多義語処理や連想概念処理といった、多様な言語刺激を用い、より高次な言語処理システムの解明に寄与する事を目標としている。