2013年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

<ヨーグルトのプロバイオティクス効果を支える分子メカニズムの解明>

政策・メディア研究科 修士課程2年
先端生命科学(BI)
石井 千晴
Login ID: chiharu
Student ID: 81224074


【研究概要】
近年、微生物の力を借りて健康状態を良好に保つプロバイオティクスという概念が定着しつつあり、中でもヨーグルト摂取による整腸作用が注目を集めている。ヨーグルトは豊富な乳酸菌、ビフィズス菌を含有しており、それらの乳酸菌などが腸内細菌のバランスを整えることで、様々な健康増進作用があるといわれてきたが、近年の研究からヨーグルトを摂取しても腸内細菌叢の大幅な構成変化が起こらないことが明らかになり、細菌の数や構成ではなく細菌個々の遺伝子発現やその結果としての代謝物質濃度の変化などが重要であることが示唆されている。そこで、本研究では一定期間ヨーグルトを摂取させた健常者の糞便を対象に、ヨーグルト摂取前、摂取期間、摂取後の腸内細菌叢と代謝物の変化を、それぞれメタゲノム解析、メタボローム解析を用いて解析し、ヨーグルトのプロバイオティクス効果を支える未知の分子メカニズムを解明することを目指す。
【手法と結果】
18名の被験者に2ヶ月間毎日ヨーグルトを摂取していただき、ヨーグルト摂取期間の前後を含めて9回採便をしたサンプルを対象に、CE-TOFMSによる網羅的なイオン性代謝物質の測定を行った。得られた代謝物質プロファイルを主成分分析を用いて評価したところ、ヨーグルト摂取、非摂取によって代謝物質プロファイルはクラスタリングされず、ヨーグルトを摂取しても腸内代謝物質プロファイルが劇的に変化することはなかった。次にヨーグルト摂取時と非摂取時に有意に増減した物質を検証したところ、ヨーグルト摂取時に変化する物質は個人によって異なることがわかり、ヨーグルトを摂取した際の腸内代謝物質の変動には個人差があることが示唆された。
※ 国際論文誌への投稿を予定しているため、詳細は控えさせていただきます。

【学会発表】(2件)
「食事変化や加齢に伴う腸内環境の統合オミクス解析」 (ポスター)
第3回 マトリョーシカ型生物学研究会・東京
「高脂肪食が腸内細菌叢及び腸内代謝物質に与える影響の評価」(口頭、ポスター)
第8回 日本ゲノム微生物学会・東京

森泰吉郎記念研究振興基金は学会参加に必要な費用としても使用させて頂き、このような成果を得ることができました。ありがとうございました。