2013年度 森泰吉郎記念研究振興基金

研究者育成費

 

研究題目:

「有効」な世論とは何か?〜政策決定者への悉皆アンケート調査をもとに〜

 

慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年

畠山敦志

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【研究概要】

 近年の政治を考える上で世論は重要なキーワードとなっており、本研究では、「有効」な世論とは何か、ということを中心に据えていた。しかし、「有効」な世論と言うものを測定し、検証可能な形にするという作業について批判などを頂いた。そこで、世論と有権者と政策決定者である政治家の関係性に着目していくことになった。そして、この3つのアクターが交わる唯一の機会として挙げられるのは選挙である。本研究ではもともと世論が複数あるかもしれないという点に着目し、研究を行おうとしていた。その中でも特に注目していたのが、インターネットにおける世論である。2013年、初めてインターネットを利用した選挙活動が解禁された。そこには初めて選挙におけるインターネット上の世論や有権者の意見と政策決定者となりうる候補者との接点が生まれたのである。私はこの点に着目し、研究を進めていくことにした。選挙時の資料などを収集し、整理を行うと多くの試みなどを散見することができたが世論と、有権者、候補者の関係を分析するための情報としては不十分であった。そこで候補者がインターネット選挙解禁に際してか行った施策について有権者や世論という視点からヒアリングを行った。今回のヒアリングは北海道選挙区で行った。この場所を選んだ理由としては2つある。1つは本研究の研究代表者の出身地であり、容易に政党などに話を聞く事ができた点である。2013年の参院選は民主党政権の失敗を経た選挙であり、民主党が不利な選挙を戦ったものだった。その影響を最も受ける度合いが少ないと考えられたのが民主党支持の強い北海道選挙区である。これが2つ目の理由である。本研究では、当初悉皆アンケートを行う予定だったが、予算の不足と研究の方向性の変更から2013年参院議員選挙北海道選挙区の候補者にヒアリングを行うことになった。

 

【ヒアリング結果】

2014210日から14日の間に北海道でヒアリング調査を行った。期間中にヒアリングを行えたのは共産党と民主党の2つの党であった。自民党については、電話口で聞き取りを行い詳しい項目についてはFAXで聞くこととなった。また他党についてはFAXもしくは、現在調整を行っている。

それでは本調査において得られた興味深い点を何点か挙げていきたい。

@ インターネットを使った有権者との相互関係は見られなかった。

インターネットを使った選挙活動では、一方通行の関係がメインとなってしまい、政策の理解向上や意見収集といったことは行われなかった。この点については政党担当者も有権者との相互コミュニケーションに難しさを感じていたようだった。

A 自民党以外の党では、選挙におけるインターネットの利用は候補者や支部の裁量に任されていた。

多くの野党では本部からの支持は最低限のものであった。また自民党でどのような支持や戦略が行われたかについては聞き取りを行うことができなかった。

B インターネットでの選挙活動は、通常の選挙活動や、政治活動の補完的なツールとして考えるべきである

政策決定者である政党や候補者は、インターネットはあくまで1ツールとして考えているということがわかった。一方でこれからのインターネットの活用には非常に積極的であり、今後統一地方選や衆院選などでさらなる拡大が見込まれるとのことだった。

 

以上をまとめると今回の参院議員選挙北海道選挙区において、インターネット選挙活動を通した有権者と候補者の相互関係は認められなかった。またインターネット上の世論について特別な考慮なども行われてはいなかった。だが、認識としてインターネットというツールが政治という領域において重要度を増していくということは一致してあり、そのために様々な施策を準備しているとのことであった。

 

 

【ヒアリングについて】

ヒアリング項目一覧

インターネットで選挙活動するにあたって使用した媒体

参院選以前から政治活動で使用していた媒体

選挙活動後も継続して情報発信は行っているか?

一日どの媒体で何回ぐらい情報発信をしたか?

有権者との相互交流はあったか?

インターネットを選挙で利用する際に、党の支持の他に独自に何か行ったか?

いままでの選挙活動との違いは感じたか?どのような違いか

インターネットでの発信と通常の街頭での選挙活動でなんらかの違いは付けたか?

有権者の反応についてインターネットと通常の街頭での活動で違いは感じたか?

インターネットに専属で従事するスタッフはいたか?(何人か)

インターネットで有権者に関する情報収集のようなことは行ったか?

インターネットを使った選挙活動を行ってどう感じたか?

インターネットでの選挙活動が解禁され、有権者との関わり方は変わったか?どのように

 

ヒアリング先一覧

・民主党(ヒアリング済)

・自民党(電話、FAXによる調査)

・共産党(ヒアリング済)

みんなの党(FAXによる調査)  (全て北海道支部)

新党大地(調整中)