2013年度 森基金 成果報告書

 

微細藻類ユーグレナでの包括的遺伝子発現解析研究

 

 

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 先端生命科学 (BI) 修士1

学生番号 : 81325285

吉田 勇太

 

 

 単細胞真核生物 Euglena gracilis (和名: ミドリムシ) が生産する貯蔵脂質ワックスエステルは,工業的に精製することでジェット燃料として利用できるため,バイオ燃料リソースとして期待される.Egracilisは好気条件下で光合成により独立的に炭素同化を行い,この生物独特の貯蔵糖パラミロンを細胞質に蓄積する.この後,嫌気条件に移行することでパラミロンを分解し,ワックスエステルが小胞体に蓄積される.この一連の反応はEgracilisで見つかったユニークな合成系であり,「ワックスエステル発酵」と呼ばれる.その他,Egracilisはバイオ燃料生産に有用な環境耐性を複数持つためオイル生産藻として有望視されているが,ワックスエステル発酵経路や核ゲノム配列など遺伝子レベルでの解析が遅れており,塩基配列情報の不足が大きな問題の一つとしてあげられる.そこで本研究では,RNA-Seqを用い網羅的な遺伝子発現解析を行うことで,ワックスエステル発酵調節メカニズムの解明を目的とする.また,その過程で得られた遺伝子配列情報を整理することで,他のオミクス解析の助けとする.解析には酸素条件や栄養条件の異なる5つのEuglena細胞を使用し,そこから得られるRNA-Seqデータを元に解析を行った.発現遺伝子をTrinityde novoアセンブルした結果,約45,000contig配列を得,それらの発現量解析とデータベース検索を行った.結果,サンプル間で大きな有意差は見られなかったが,今後の解析に利用できる多数の発現配列を得ることができた.これらの配列データを用いて好気・嫌気条件下でのサンプル間発現変動やアノテーション付加を行い,それぞれの条件で特異的に発現する遺伝子の探索を行なっていく.

 

 

Keyword: EuglenaBio-fuelWax ester fermentationRNA-Seq

 

2013年春学期報告書

2013年秋学期報告書