2013年度森基金活動報告書

 

                中国保障性賃貸住宅普及においての資金問題の解決

         政策・メディア 修士2年 倪 雨晴 PS所属

          学籍番号;81225630

背景

1低所得者むけ賃貸住宅建設の必要性

l 低所得者住まいの現状

 とくに農民工の住まいに重点を置く。

l 賃貸型の廉租房が一戸建ての経済適用房より優先される理由

 最近の中国のある地方では経済適用房を撤廃するとのニュースもある。理由としては、適格申請者に対する条件が不明確である。虚偽の申請を行う場合も少なくない。政府関係者が購入しやすいなどの腐敗が絶えない。また、住居状況の深刻な低所得者の多くがオファーできるのは賃貸型住宅のほうである。 

2廉租房融資の必要性

Ø 現在主な資金調達方法は以下のように分類する。

l 土地譲渡純利益の中で廉租房建設に割り当てる資金

l 住宅公積金キャピタル・ゲインから貸し倒れ引当金をひいた残高

l 財政予算の中の廉租房住宅に割り当てる資金

l 廉租房の家賃収入

l 社会寄付そのた

 それぞれ占める割合は以下の図になる

 

 

Ø 財政予算、住宅公積金と土地譲渡収益を資金源としてそれぞれどのような不安定な要素が秘められているかを明らかにする。

Ø  現在多くの地方政府の廉租房などのプロジェクト建設においての計画及び実際の実施状況。

 

研究内容

 イギリスのPPPとアメリカのREITを組み合わせた民間を活用する制度の導入を考える。イギリス発祥のpublic private partnership 、いわゆる民営化の生まれた背景、メリット及びデメリットを明確にする。また、民営化にも多くの形態があり、BOT 、BOO、 outsourcing、コンセッションなどが考えられるが、それぞれの具体的な仕組み、細かな区別を比較する上、最もふさわしい形態の導入を検討する。所有移転型で、建設と運営を全部民間に任せるのか、あるいは政府が所有し、建設だけを民間に委ねるのかどちらが中国の現状にはよりよい選択肢かを詳しく検討する。REITは住居サービスの向上、資産価値の高めの点においては非常に効率的であるため、建設後の運営に活用できると考える。

 

研究のアプローチ

l 国内外の文献を調べる。

・国外の保障性住宅普及に用いる資金調達方法を調査し、アメリカのLIHTC、日本の住宅金融公庫、住宅金融支援機構の仕組みなどを明らかにする。アメリカのように税金を返還する形で民間の投資家にインセンティブを与えていることを参照し、REITの賃料回収からの収益が少なく、投資家にとっての魅力がそれほど大きくない時に、税金の返還制度が個人投資家及び機関投資家をひきつけるインセンティブになる。中国の国情に基づき、財政負担を軽減し、廉租房資金調達に活用できる制度を提案する。PPP、REIT、MBSまた空き家を廉租房に転換するなどが考えられるが、本研究がとくに主張したいのはPPPとREITを組み合わせた資金調達の仕組みであり、そのメリットおよび実現可能性をデータにもとづいて論理的に推定し、説明したいと思う。

・先行研究の不足な点

1 中国の不動産信託の発展現状及び国外にある不動産信託の形についての説明は言及する程度であり、深く探求はしなかった。現在の中国では私募不動産信託が発展しつづけているが、不動産信託分野に関する法制度が整っていないため、まだREITとは言いにくい。これから中国でREITを導入させるためにまず中国不動産信託の現状を明らかにすべきである。

2 保障性住宅の中になぜとくに廉価房に注目したかとの理由が詳しく書かれていない。

保障性住宅の中、おもに三つがある。経済適用房、廉租房と公租房である。どちらも建設資金が非常に不足している。なのに、なぜ経済適用房、公租房ではなく、廉租房を中心に議論を進めるのか説明する必要があると思う。

3 中国の保障性住宅の建設及び運営にREITを導入するというプロセスを具体化していない。またREITの中国での実現可能性について収益率などの推定を行うが、数値を決める根拠がよわいと感じた。例に、廉租房を建築する場合の平均コストの推定で、ある先行研究には商品住宅平均価格の70%、ある先行研究には80%だと書いてあった。確かに土地譲渡金と多品目の税金が免除されることになるが、評価の基準は過去の経験によるものだけでは説明力が弱いように思う。

l 比較・参照法を用いる

国外にある不動産信託モデルを参照比較し、最も中国の現状にふさわしいモデルを作り出すのである。また、すでに中国で企画されているREITの方案、銀監局の債券型REITと保監局のエクイティ型REITがあるが、それらも参照にしたいと思う。

l データベースでの計算

とくに賃貸住宅運営の段階でのREIT導入の実現可能性の説明には関連データを求める。

投資家に魅力あるモデルの設計には収益率が一番重要視される。ネットプレゼントバリュー法を用いて内部収益率(IRR)を推定する。

 

 

本研究のオリジナルティ

 先行研究を調査した上に、中国の保障性住宅普及の現状及び資金面の問題を明らかにし、

資金調達の解決策のひとつとしてPPPとREITの採用を考えたいと思う。そのモデルを具体化し、中国の不動産信託の発展現状及びアメリカのREITの仕組みを両方考慮にいれて、どのようにREITを中国の公共事業の建設にやくだたせるのかを論理的に考える。アメリカのREITをそのまま中国に定着させるのではなく、まずpppを通じて民間会社に特許を与えて廉租房を建設してもらう。一定期間後に、また政府に譲渡する。次に住宅運営管理にはspvを通じてREITをたちあげるとの二つの段階に分けたいと思う。候補としては空き家を廉租房へと転換やMBSなども考えにいれる。

 また、資金調達の民営化は必ずしもメリットをもたらすのではなく、デメリットが伴うことが多いので、デメリットをも考慮の上にいれて研究を進めたい。

 

 

参考文献;

1 Yuxuan Huang ,An investigation into the use of REITs to finance affordable housing in mainland china, Massachusetts institute of technology (2010)

2「廉価住宅と公共賃貸住宅にリート融資を行う実行可能性」趙以刊 「武漢金融」2010年9期

3「PPP融資モデルの廉租房建設応用可能性研究」 宋海秋 杜葵 「商場現代化」2010年11月(下旬刊)

4「日本住宅金融公庫の改革とそのインプリケーション」 謝福泉 黄俊暉 「亜太経済」

2013年2期

5「中国廉租房資金源、現状、問題および対策に関する研究」 胡金星「中国不動産金融」

2009年8期