2013年度 森泰吉郎記念研究振興基金 成果報告書

Synchrometer:ライフログを利用した日常行動における他者との類似度検出

政策・メディア研究科(CI) 修士過程2年 勝治宏基

研究概要

 近年,センシングデバイスの小型化,低価格化により,携帯電話をはじめとした様々なウェアラブルデバイスにセンサが組み込まれる様になった. センサが搭載されたウェアラブルデバイスが普及した事で,人が現在行っている事を取得する事が容易になった. 一方で,情報技術の発達により,デジタル情報を記録するストレージの容量が急速に拡大した. これにより,私達の行動を記録・蓄積するライフログが幅広く行われる様になった.ライフログデータを解析する事によって他者との関係性を可視化する事が可能になる. 現在行われているライフログデータを利用した他者との関係性を可視化する試みのほとんどが数種類のライフログデータのみしか利用していない. また,これらの研究は他者との関係性の可視化を行う際に限られた範囲でのみ行動の比較を行っている.
 本研究では,ライフログデータを利用して自分と他人の1日の行動から2人の似た行動を類似行動として発見するシステムSynchrometerを提案する. Synchrometerで発見した他者との行動の類似部分を可視化する事で,比較相手との関係性を利用者にとって分かりやすい形で提示する事が可能である. それにより,利用者に新たな気付きを促し,自身の行動改善の手助けを行う事が可能になる. また,Synchrometerは不特定多数を対象に類似行動の発見を行う事が可能である. 例えば,医療や介護の分野で,特定の疾患を患った人の行動の特定により,病気の早期発見が出来る可能性がある. また,SNSを通じて,自身と似た様な相手を探す事で,新たなコミュニケーションの場を生成する事が可能である. 本研究では,類似行動として同期行動と相似行動を定義した. 同期行動は比較する2人が同じ時刻に行っている行動である. 相似行動は,2人の行動の遷移が一致している際の行動である.また,両行動の評価指標としてそれぞれの行動の類似度を表す同期度,相似度を算出した.
 本研究で提案するSynchrometerを利用する事で得られる類似行動及び類似度が利用者にとって有用であるかを評価する為に評価実験を行った. 被験者に行動を記録してもらい,収集した生活記録情報を利用して被験者同士の類似行動の発見及び類似度を算出した.さらに,それらを被験者に対して可視化を行った上でアンケート調査とインタビューを行い,本研究で提案する類似行動の有用性を検証した.

本年度の成果

修士論文

対外発表