2013年度 森泰吉郎記念研究振興基金研究者育成費 研究成果報告書

中国における企業のCO2排出量算定・管理制度の整備状況の評価と提案

 

政策・メディア研究科 修士2

薛 冰川

 

地球温暖化の主な原因は世界全体のCO2排出量の増加であり、その削減は国際的な課題となっている。しかし、先進国は企業の生産拠点を途上国に移す、或いは原材料等を途上国からの輸入に切り替えることで自国の排出量を削減しており、結局世界全体での排出量は増えている可能性がある。この問題の真偽を明らかにするためには、グローバル・サプライチェーンのCO2排出量管理を導入し、企業における各段階の排出量を把握することが必要となる。特に「世界の工場」と言われる中国でのCO2排出量の把握は重要な課題である。しかし、中国におけるCO2 排出量管理・報告の関連制度は十分に整備されておらず、企業、特に中小企業のCO2 排出量の把握は非常に困難である。そこで本研究では、中国企業のCO2排出量および関連するエネルギー使用量の管理・報告制度の整備状況を評価すること、そして、特に中小企業のCO2排出量の把握を実現するため、今後に向けた制度整備の方向性を提案することを目的とした。

まず、文献調査およびヒアリング調査を通じ、中国における企業レベルのCO2排出量およびエネルギー使用量の管理・報告制度の現状を考察した。次に、現行制度の問題点を明らかにするため、参考となる国際諸基準および日本制度との比較検討を行った。これらをもとに、サプライチェーンのCO2管理を中国に導入し、中小企業のCO2排出量の把握を促進に貢献できる視点から、今後の制度整備の方向性に関する提案を行った。

結果として、現在複数存在するエネルギー使用量報告制度がCO2排出量の把握を阻害していることが明らかになった。さらに、CO2排出量の把握において、特に中小企業に向けた政策および支援策が欠如していることが明らかとなった。これらの結果をもとに、今後あるべき方向性について4つの政策提案を行った:@企業向けのエネルギー使用量報告制度の見直し、A企業規模によるCO2排出量管理・報告制度の差別化設計、B大企業と中小企業の連携による排出権取引の活用、CCO2排出量管理のアウトソーシングというビジネス・モデルの導入。

本研究は、中国における企業のCO2 排出量を把握するための制度改善に関して、国からの支援的手法の適用を企業が受けることは中国において、社会的意義が高いと考えられる。今後、企業の利用実態を一層把握する上で、提案の実行可能性を検証する必要がある。