2013年度森基金 研究成果報告書 


各主要臓器及び消化管内容物のマルチオミクス解析


政策・メディア研究科 修士課程 2年 

先端生命科学

山本 優理

Login ID: yuppy 

Student ID: 81225144


研究成果

腸内細菌とは動物の腸内に生息している細菌のことであり,宿主の消化管での消化機能をサポートする働きがある.消化管は部位ごとに機能が異なり,胃では胃酸や消化酵素による食物の消化を行い,小腸では主に分解された食物の吸収を担う.大腸では栄養素の吸収はほとんど行われず,水分とミネラルの吸収,及び,便の排泄が行われる.さらに,各消化管部位では腸内細菌叢が異なることが報告されているため,本研究では,各消化管部位での腸内細菌の機能と腸内細菌-宿主間の関係性を明らかにするために,消化管内容物の代謝物プロファイルと消化管に生息する腸内細菌叢プロファイルの統合解析を行った.本研究では,マウスの消化管の部位ごとに内容物を採材し,代謝物プロファイルと細菌叢プロファイルを調べた.さらに,無菌(Germ-free: GF)マウスとSPF(Specific pathogen-free)マウスを比較することで腸内細菌の有無による腸内環境の変化についても解析を行い,各部位における変化について詳細を調べた.メタボローム解析の結果から,SPFマウスとGFマウスともに代謝物プロファイルは消化管の部位ごとに異なることがわかった.SPFマウスとGFマウスの代謝物プロファイルが異なる原因として,腸内細菌の有無だけでなく宿主の消化機能などの影響があるのではないかと考えられる.細菌叢解析の結果,SPFマウスで特徴的な細菌が4つ挙げられた.本研究により,マウス消化管部位における網羅的な代謝物と細菌叢のプロファイルの違いを明らかにした.また,代謝物と腸内細菌の新たな相関関係の存在について示唆することができた.



※本報告書はweb公開であるため,論文発表前の具体的なデータを除いて作成した.