初等教育におけるICT(3Dプリンタ)を活用した授業の実践と指導方法の開発

 

鈴木 二正

Tsugumasa SUZUKI

 

 

1. はじめに

 

本研究は、早期のICTスキルやICTリテラシの定着を目指し、小学校2年生を対象に普通教科での3Dプリンタを使った教育実践を試みたものである。

近年、教育現場への3Dプリンタ導入が盛んである教育の電子化や、電子黒板やタブレット端末等とともに、3Dプリンタの学校現場への導入については,日本の国策としても注目されており、重要性が高まっている。しかし、実際の授業場面において、3Dプリンタを学校現場で活用する先進的な実践事例が、高校生以上を対象とした高等教育機関での授業や利用が比較的多い状況を鑑みれば、小学校の児童、特に低学年生という低年齢層を対象とした3Dプリンタの授業実践という本研究の意義は大きいと考えている。

 

 

2.システム環境

 

授業で使用する3Dプリンタとして導入したものは、ムトウエンジニアリング社製のパーソナル3Dプリンタ「3D Magic Egg」である。

本製品を導入した理由としては、国内メーカーによる国産3D プリンタであること。また、国内メーカーによるサポートを受けられる点と、複雑な3D CADシステム等を使用しなくとも、シンプルに3Dモデルのデータ作成が可能となるよう開発された3Dモデル作成ソフト「Sunny 3D」がバンドルされているからである。

 

 

 

パーソナル3Dプリンター 3D Magic Egg 3Dモデル作成ソフトバンドル (フロント扉:ライトグリーン/側面:半透明) MF-1050-WG

 

 

3.実践授業

 

国語や算数、社会といった教科の枠にとらわれず、はじめて3Dプリンタに触れてみる、3Dプリンタを使うと何ができて何ができないのか知ることを目的に、3Dプリンタを使った実践授業を筆者の担任する小学校2年生のクラス(児童数36名)を対象に、2015123日(金)に行った。

コンピュータ教室に集合し、まずは、3Dプリンタの紹介から行った。「3Dプリンタについて知っているか、聞いたことがあるか」の問いかけに対し、ほぼ全員の児童から「知っている、聞いたことがある」との反応があり、また、テレビなどの報道からも知っているとの声があがった。

本時の授業では、立体造形物を制作することを伝え、「Sunny3D」の起動の仕方、操作方法についてスライド(図1)を使用しながら、実演を行った。

 

 


 

図1:説明用スライド

 

 

立体物を制作するデモンストレーションを実際に見せて、「視点を変える」を説明する際、小学校2年生にとっては、初めてということもあり、「描いている自分の目を動かす」という視点の移動の把握が難しくもあり、同時に、新しい感覚として3Dの立体物はこのように制作するのかという点に興味・関心が大変高まっていた。

教員側から、アイデアのヒントとなるように「一筆書き」のように描くことがポイントであることを伝えた。

説明後、制作を開始し、完成したら、自分たちで作品をDropbox上に保存(アップロード)すること、また、時間があれば、2つ以上の作品も送信してよいこととした(図2)。

 

 


2:保存の仕方スライド

 

 

実際の制作に入って10分も経つと、操作は徐々に児童も操作方法に慣れて、教員が教えなくても児童が自ら工夫し、進めていく様子が見られた。集中して作品制作に取り組む活動が行うことができ、33名の児童が作品を完成し保存を行えた。

課題として、挙げられることは、以下の3点である。

 

・飛行機や、ロボットなど、あとからパーツを増やしていく3Dプリンタデータの作成は、高度な技術が必要となるため、操作面でより多くの時間が必要となる。

・犬や猫のように四肢をきっちり描こうとすると、長すぎたり、もしくは短すぎたりと、四肢のバランスがうまく表現できない場合がある。

・あとから部品を制作し、本体と部品をどのようにつながるかの操作面で難しい点があった。

 

児童の制作した3Dデータ作品をいくつか以下に示す。

 

 

 

 

 

5.さいごに

 

小学校2年生を対象に、3Dプリンタの実践授業を初めて行ってみて、子どもたちの際限の無いアイデアや、今後の活用の可能性も見られた。教育現場での導入の効果について考えるとき、より年齢の若い小学校での導入と効果に関する知見や考察を積み重ねることが必要である。本稿で述べた小学校2年生のときの実践のデータを礎として、さらなる教材開発と、授業研究を進めることを目標として設定し、今後も引き続き3Dプリンタを活用した実践授業のデータの蓄積と教育効果の検証を進めたい。