慶應義塾大学 政策・メディア研究科
森基金研究成果報告書
公共メディアの為のニーズに応じた情報配信機構
政策・メディア研究科 博士課程3年
小川正幹
概要
デジタルディスプレイやプロジェクタなどの情報表示機器の価格の低下にともない,
街中や駅などの公共空間で様々な情報の配信を行う公共メディアが普及してきた.
それに伴い,従来の紙による情報提 供では表現できなかった動きのあるコンテンツや,
より情報量の多いコンテンツを公共空間に埋め込むことができるようになった.
さらに,公共空間の人々に一方的に働きかけるメディアだけではなく,空間の人々の行動によって
挙動が変化するインタラクティブなメディアも登場してきた.今後も多くの情報量を持つメディアやインタラクティブなメディアは公共空間に増加していくと考えられる.
しかし,このよう な公共メディアの情報量の多さは,空間内の人々のメディアへの関心を減少させる要因ともなっている.
そのため,広告や宣伝等のために多くの情報を配信していたとしても,そのような情報が実際に人々の行動に影響を与えることは難しい.
従って本研究では,このような情報にインタラクティブ性を持たせるこ とにより,人々の中での情報の価値を高め,人々の行動に影響を与える手法を提案する.
具体的なシステ ムとして,インタラクティブなクーポン配布システムであるスマイルクーポンシステムを開発し,実際の 公共空間に設置し,フィールドスタディを行った.
その結果 2 ヶ月間で97回実際にクーポンが交換され, スマイルクーポンシステムの有用性が示された.
スマイルクーポンシステム
スマイルクーポンシステムは,笑顔度によってユーザに与えられるインセンティブが変化するクーポン配信プラットフォームである.
このようなインタラクティブなクーポン配信プラットフォームを用いる事によって,ユーザの興味・関心を得る事ができるため,
クーポンを配信するというニーズに対してより効率的に情報を配信して行く事が出来ると考えられる.
スマイルクーポンシステムは,公共ディスプレイ,Webカメラ,管理用PCから構成されている.
公共ディスプレイはクーポンの内容と,Webカメラによって取得されたカメラ映像,現在の笑顔度を表示している.
Webカメラはディスプレイの前の映像をキャプチャし,管理用PCは現在の笑顔度を計算している.
スマイルクーポンシステムのハードウェアの構成及びソフトウェアの概要を図1及び図2に示す.
図1
図2
今年度の成果
今年度は,本研究を実際に江ノ島電鉄株式会社の協力のもと,駅構内に設置を行い,大規模なフィールドスタディを行った.
その結果を論文にまとめ,論文誌として投稿し,現在査読中である.
また,今年度投稿した論文を以下に述べる.
- 公共メディアへのジェスチャ入力のための ユーザに対する操作指示手法(情報処理学会論文誌「ユビキタスコンピューティングシステム(Ⅳ)」)
- A Robot Control System for Video Streaming Services by Using Dynamic Encoded QR Codes (IEEE ICMU2015, Best Poster Awardを受賞)