2014年度森基金報告書

主体的参加を創出する地域協働プラットフォームの設計

坂倉杏介/政策・メディア研究科博士後期課程/81249250

 

 

概要

 本研究は、住民参加型の地域イノベーション活動の創出過程を「住民や移住者の人生の転機」と関連づけてとらえ、地域に参加し主体的に活動を発展させていく過程を、主体それぞれの生活環境やライフサイクルの移行における自己認識と他者関係の変化として分析するとともに、そうした変容が生じる「場」に必要となる要件を協働プラットフォーム設計の視点から検証する。筆者が港区との連携で推進するコミュニティ拠点「芝の家」では、多くの住民が主体的に参加し新たな地域活動を生み出しているが、こうした参加者の意識と行動変化を分析したところ、活発な活動を行う人ほど、それまでの生活環境や思考習慣を手放し、人生の新しいステージに移行したという主観的認識変化を体験していることが分かった(坂倉他2013)。

 本研究では、拠点を設置することによって、つながりと活動を創出している3事例(「うちの実家」、「リタクラブ」、「津屋崎ブランチ」)の事例研究を行い、それを創出するための新しい協働プラットフォーム設計の指針を提案する。

 

活動成果

 今年度は、2014年に実施した参加者へのインタビューデータのトランスクリプトを作成し、3事例における参加者の意識・行動変化についてグランデッドセオリーを用いて分析した。平行して、プラットフォームアーキテクトへのヒアリングと現地での参与観察、実測調査を通じてプラットフォーム設計の要点をまとめた。研究成果は、「the 10th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia」や「地域活性研究」で発表した。

 また、今年度は徳島県神山町のフィールドワークを行い、NPO法人グリーンバレーの取材を行うなど、本研究の成果をさらに発展させるための予備調査を実施した。

 

成果発表

 坂倉杏介、保井俊之、白坂成功、前野隆司「『共同行為における自己実現の段階モデル』を用いた協創型地域づくり拠点の参加者の意識と行動変化の分析」、地域活性研究Vol.6、印刷中。

 Sakakura, K., A Study on Effective Management Factors of Machi no Ibasho (Small Community Spaces) in Japan, Proceedings of the 10th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia, Architectural Society of China, Oct, 2014, pp.307pp.312