森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告

所属: 政策・メディア研究科 CI 修士過程一年
氏名: 加藤慶之

【研究課題名】色彩・音楽印象変化の相互変換による可視化型楽曲検索

研究概要

本研究の目的は、“音楽における印象の変化”を指定することにより、利用者にとって未知の楽曲、あいまいな印象のみを記憶している楽曲を、効率的に検索するためのシステムを構築することである。本研究は、“印象の変化”という言葉では表現しにくい特徴を、画像の色彩の変化として入力可能にするために、色彩特徴の変化量を音楽特徴の変化量に変換し、検索クエリとして用いることが出来る、印象変化可視化型音楽検索システムを実現する。これにより、インターネット上の音楽配信サービスにおける楽曲検索環境において、利用者が期待する楽曲の印象を、画像の色彩印象編集を通じて視覚的に指定し、探索することができる。

図1 : 研究概要

活動報告

本年度前期は、本システムにおけるユーザ・インタフェースの設計、およびプロトタイプシステムの開発を行った。具体的には、タッチスクリーンをインタフェースとして持つモバイル端末から、色彩・楽曲印象変化の相互変換を用いた楽曲検索システムを利用するためのクエリ構築機構を提案した。また、この研究成果について、モバイル技術に関する国際会議であるMDM2014(IEEE MDM 2014 - 15th IEEE International Conference on Mobile Data Management 15-18 July, 2014, Brisbane, Australia)において次の論文(デモペーパー)の筆頭著者として発表を行った。

Yoshiyuki Kato and Shuichi Kurabayashi, “A Cross-Media Music Retrieval System by Converting Color Changes into Tonal Changes”, To Appear In Proceedings of the 15th IEEE International Conference on Mobile Data Management (MDM2014) 15-18 July, 2014, Brisbane, Australia.

図2 : ユーザインタフェース

本年度後期は、前期に取り組んだ、クロス・メディア楽曲検索システムの一般化に取り組んだ。具体的には、色彩・音楽特徴変化量の相互変換機能を、円環型特徴量空間を持つ異種メディアの変化量相互変換メカニズムとして抽象化した。本メカニズムは、時系列変化を伴うメディアコンテンツの「動き」を、特徴量空間内における相対的な距離のシーケンスとして導出する。これにより、異種メディアの動的な特徴を抽象的な変化のパターンとして比較することが可能になる。本メカニズムは、特徴量空間内における距離を相対値として計量するため、特徴量空間に円環構造を持つメディア(音楽、色彩、形容詞など)に適用可能である。また、この研究成果についてまとめた論文を学会に提出した。

図3 : 円環型特徴量空間を持つ異種メディアの変化量相互変換メカニズム