森基金 研究成果報告書
医療機関・行政・住民による地域包括ケアモデルの構築
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
修士一年 81424497 杉本頌子
(所属:政策形成とソーシャルイノベーション)
研究目的
本研究の目的は、地域の医療機関や地域住民、行政が協力して地域包括ケアシステムを創り上げるための一つのモデルを構築することである。国の政策として2014年以降、「在宅医療介護」を中心とした地域包括ケアの推進が図られているが、現状では、訪問診療を提供している医療機関の数は十分とは言えず、また、連携も十分には取れていない。そこで本研究では、島根県雲南市の事例をもとに解決の方途を探る。
@ 事例における地域衣料の当事者間協力関係の形成プロセスを明らかにする。
A 事例において、地域衣料の当事者である中核病院の勤務医、行政、病院利用者である地域住民の立場から、協力関係形成を成立させた要因を明らかにする。
背景
急激な高齢化社会を迎え、わが国は多くの医療問題を抱えている。厚生労働省の調べによると、平成23年度の国民医療費は38兆円5,850億円で、前年度の37兆4,202億円に比べ、3.1%増加している。また、人口一人当たりの国民医療費は30万1,900円、前年度の29万2,200円に比べ、3.3%増加と、医療費に対する負担額は毎年増大している。
医療費は増大する一方で、医療資源は減少してきている。厚生労働省の調べによると、我が国では現在、約8割の方が病院で最期を迎えているが、急激な高齢化社会を迎え、今後は高齢者に対して、病院や診療所の数が不足するため、在宅で療養を行う必要瀬が出てくる。また、予防医療においては、予算削減で保険師人員数が減少し、医療職の呼びかけが届く住民が限られてきており、それは今後さらに加速されると考える。
先行研究
• 支援を要する高齢者のための地域ネットワーク構築,福田あけみ(2006)
• 日本の高齢社会の今後と地域包括ケアシステムの構築に向けて,高橋紘士(2012)
• 地域包括ケアシステム構築と行政の役割,沼尾波子(2012)
• 地域包括ケアシステムの構築をめざしたソーシャルワークの実践的課題の一考察,井上孝徳、川崎順子(2011)
• 地域包括ケアシステムの担い手とケアマネジメント・ネットワークの構築,井上信宏(2005)
• 地域包括ケアシステムの構築における一考察,松浦信二(2005)
構築後のについて書かれている研究はあるが、形成プロセスについて記述されている研究は少ない。
構築にあたり、必要とされる人材育成の点について書かれている研究が少ない。
当事者視点(行政、住民、機関)で書かれている先行研究は少ない。
研究対象
島根県雲南市
平成16年11月1日 大東町・加茂町・木次町・三刀屋町・ 吉田村・掛合町の6町村が合併し、「雲南市」誕生。
雲南市を中心とする雲南医療圏は、市の東西にある東出雲町、飯南町と併せ1市2町で構成されている。
医療圏の人口は約6万人だが、面積は非常に広大で 地域の大部分が山野で占めており、不便な生活環境のなかで暮らす高齢者も多い。また、人口の減少は著しく、
1960年と比較すると6割程度に減少した。高齢化率は35%を越え、高齢化が進んでいる地域の一つである。
調査結果
【地域包括ケアとは】
地域住民に対して保険サービス、医療サービスおよび住宅ケアやリハビテーションなどの介護を含む福祉サービスを関係機関が連携、協力して、地域住民のニーズに応じて、一体的、体系的に提供するシステムのことである。(松浦信二,2005)
地域住民が住み慣れた地域で安心して尊厳あるその人らしい生活を継続することができるように、介護保険制度による公的サービスのみならず、その他のフォーマルやインフォーマルな多様な社会資源を本人が活用できるように、包括的および継続的に支援すること。長寿社会開発センター編(2011)
《幸雲南塾》
【目指す姿】
•
社会起業家や地域貢献を志す若手人材を掘り起こし、ネットワーク化する
•
地域での活躍する若者人材育成・排出のプラットフォームを作る
【ターゲット】
•
市内だけでなく、市外の若者
【講師】
•
県内で活躍する同世代の若手起業家(塾終了後の関係がもてる)
【事業の推進体制】
雲南市次世代育成事業実行委員会
〈市役所〉産業振興部、教育委員会、政策企画部
〈その他〉雲南市商工会、 JA雲南、吉田ふるさと村
運営委託
NPO法人農家のこせがれネットワーク(宮地さんなど)
今後
・ 雲南市の取り組みである「地域自主組織」について調査する。
・ 幸雲南塾の卒業生が、どのように関わっているか調査する。