森基金成果報告書

研究科題名:電子書籍にパラパラ漫画を表現する「でんぱら」の提案
所属:政策・メディア研究科修士1年 CI プレイス&モバイルメディア
学籍番号:81424731
氏名:橋本真琴


研究概要


近年、スマートフォン、タブレット端末が普及し、電子書籍が広く活用されるようになっている。電子書籍は手軽に使え、便利である一方、紙の書籍が持つ本ならではの面白さを失ってきているのではないかと考える.例えば,紙の書籍の面白さのひとつとして、紙の端に絵を描いてパラパラ漫画を作るということがある。そこで、電子書籍にもパラパラ漫画を表示し、新たな楽しみ方を提案したい。しかし、パラパラ漫画を描く際の問題点として、何枚も絵を描かなければならないということがある。紙の書籍と違い,コンピューター上で絵を描くことは難しく誰でも手軽に作成できるというパラパラ漫画の利点が失われてしまうのではないかと考える。そこで、だれでもパラパラ漫画を楽しめるために、簡単にパラパラ漫画を作ることができる「かんぱら」システムを構築した[1]。この「かんぱら」システムを用いて作成したパラパラ漫画を表示できる電子書籍のインターフェース「でんぱら」を提案する。


システムのコンセプト


「かんぱら」システムでは、1枚の画像を変形させることで別の画像を生成し、パラパラ漫画を作成する。「かんぱら」システムを用いて作成したパラパラ漫画は電子書籍のインターフェース「でんぱら」に表示される。

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「かんぱら」システムの実装


「かんぱら」システムでは、パラパラ漫画の動きの多様性に対応するため、「回転射影方式」と「パラパラ動きパターン方式」の2つのアルゴリズムを制作した。回転射影方式では、画像を3次元で表示して、それぞれx、y、z軸を中心に回転させることで画像を変形させる。パラパラ動きパターン方式では、予め作成した動きのパターンに画像を当てはめることで変形させる。動きのパターンは回転射影方式の動きに加え、縦横の平行移動、画像の折り曲げを使用して合計11種類の動きのパターンを作成した。

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「かんぱら」システムの検証


実際に「かんぱら」システムでパラパラ漫画を作成し、検証を行った。その結果、画像の変形が一定の角度の大きさで行われることから、作成したパラパラ漫画の動きが単調になってしまうという問題が生じた。そのため、パラパラ漫画をそれらしく動かしたいと考えた。「それらしく」動かす先行研究として,アニメーションでは,タイミングカーブの取り入れ[3],モーションキャプチャーによる動きの生成[4]などがある.そこで,タイミングカーブを採用し,「かんぱら」システムに適用し,「それらしい」動きの生成を目指した.実際にタイミングカーブを適用した「かんぱら」システムを用いてパラパラ漫画の作成を行い、「かんぱら」システムにおけるタイミングカーブの有用性を検証した[2]。タイミングカーブの適用には、変形の自由度の高さから回転射影方式を採用した。その結果、タイミングカーブが適用された「かんぱら」システムで作成したパラパラ漫画は「それらしい」動きになった。また、「かんぱら」システムを実際に被験者に使用してもらい、使いやすさ、楽しさの評価実験を行った。

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「でんぱら」の実装


「かんぱら」システムで作成したパラパラ漫画を表示するインターフェース「でんぱら」の制作にあたり、先行研究から紙の書籍のパラパラ漫画の楽しみ方に必要な要素を抽出した[5]。抽出した必要な要素としては、本の感触、パラパラと聞こえる音、画像がアニメーションのように動く視覚情報がある。それらの要素に注目し、電子書籍上にパラパラ漫画を表示し、パラパラ漫画を感じることができるようにした。


学会発表


9月京都工芸繊維大学で行われたHIシンポジウムにて、「かんぱら」システムにおけるタイミングカーブの検証についてのポスター発表を行った。タイミングカーブは「かんぱら」システムにおいてよりそれらしいアニメーションの動きを生成するために導入した。その結果、タイミングカーブを用いた方が作成されるパラパラ漫画の動きに緩急が生まれ、それらしく動きを見せることができた。


参考文献


[1] 橋本, 小川 : 1枚の画像から簡単にパラパラ漫画を生成する「かんぱら」システムの提案 ; インタラクション2014論文集, pp.271~274(2014)
[2] 橋本, 小川 : 電子書籍でパラパラ漫画を作成する「かんぱら」システムにおけるタイミングカーブの検討 ; ヒューマンインターフェース2014論文集(2014)
[3] 佐藤, 近藤, 佐藤, 島田, 金子 : アニメーション制作におけるキャラクタの動作強調手法 Motion Filter ; テレビジョン学会誌, Vol.49, No.10, pp.1280~1287(1995).
[4] Pullen, Bregler : Motion Capture Assisted Animation: Texturing and Synthesis ; ACM Transactions on Graphics (TOG) - Proceedings of ACM SIGGRAPH 2002 , Vol.21, Issue 3(2002)
[5] 城所, 藤田, 大脇, Khoa, Christopher, 伊藤 : パランガ:ページをめくる感触を再現する本型デバイス ; インタラクション2011論文集(2011)