研究課題

サラブレッドのランニングフォームにおける首と頭の役割

研究要旨

　競馬において騎手の質量は馬と騎手の合計の質量の約10%を占め、騎手の騎乗法が変わったことによりレースタイムが改善したという研究がある。だがサラブレッド自身の頭部も同様に約10%の質量を占め、その動きは騎手と比べ物にならないほど大きく激しいため、騎手の動き以上に影響が大きいと考えられる。よって本研究の目的は、サラブレッドのランニングにおいて頭部の運動が走りに及ぼす影響を調べることである。頭部を動かす首の付け根に働く力とトルクを計測し、そこからエネルギー変化率を求め胴体部とのエネルギーのやりとりの様子を観察することで、頭部の運動の役割を考察する。

研究成果

1. 競馬の高速度撮影実験

　解析に用いる実験データを取得するために、10月13日に東京競馬場にて実際のレースを高速度カメラで撮影する実験を行った。実験参加者は研究代表者を含む10名。高速度カメラ2台を用い、芝コースで行われた4レースを撮影した。また全レース終了後、馬場に入り撮影画角内におけるキャリブレーションを実施した。この実験で得られた動画データをデジタイズし解析に用いる。

　なおこの実験のために、もう一つの実験場所の候補地であった美浦トレーニングセンターにて視察および予備実験を行った。この視察には1名の実験協力者が同行した。

2. 日本ウマ科学会学術講演会参加

　12月2・3日に行われた日本ウマ科学会の学術講演会に発表者として参加した。発表日は3日で、この時点までで得られた頭部動作に関する知見を発表した。演題は『キャンターで走るサラブレッドの頭部と前肢の連動』。

今後の課題

　本年度は、春学期に研究の過去の実験データから下地となる基礎研究を行い、夏季休業から秋学期にかけて実験をアレンジしデータの取得まで行った。今後は得られたデータの解析と考察を行っていくが、学会で発表した現在の仮説は本質を捉えていない可能性があるため、モデルや手法に再検討が必要になりそうだ。

以上