政策・メディア研究科

CB Sports Science and Cognitive Ergonomics

西川健

仰木裕嗣研究室

 

研究課題「身体姿勢に基づいた着地動作における関節トルク推定

 

背景・目的

壁や地面から身体に大きな外力が作用すると,身体には大きな関節トルクや関節間力が作用する.身体運動において,これらの力は怪我の発生要因や筋力強化の要因と解釈され,一般的に逆動力学問題を解くことで推定される.しかし,外力と関節トルク・関節間力が釣合いの関係にあるとみなせる場合,これは静力学の問題に帰着し,各力の関係性が姿勢のとり方によって決定される静力学近似が成り立つ.本研究の目的は,その静力学近似が成り立つ動作において,下肢の力を簡易的に計測し,下肢に作用する力の姿勢を介した関係性を議論するための新たな手法を提案することである. 

 

手法の概要

静力学近似は,運動方程式における慣性項が外力項と比べて無視できる程小さい場合のみに適用可能である.また,外力ベクトルと重力ベクトル,そして下肢姿勢の幾何学関係から,関節トルクや関節間力を推定できる.よって、複雑な計算を伴う加速度の算出が不要となるため、簡易的な実験機器での推定が可能であり、姿勢の取り方に関する議論が可能となる。

 

実験

湘南藤沢キャンパスのメディアセンターや共同研究先にて、モーションキャプチャを用いたサッカーのキック・歩行・スクワット・スクワットジャンプの4つ動作を用いて3次元解析実験を行った。またフォースプレートも併用することで、外部から身体に作用する力も計測した。この位置座標データと力データを用いて、数値計算(力学演算)を用いて身体に作用する力を推定した。

 

研究成果

上記の実験データの解析の結果、各動作において静力学近似が成り立つことが分かった。したがって、比較的ゆっくりなスクワット動作や動作の速いスクワットジャンプ動作、また着地衝撃を伴う歩行動作やキックの支持脚着地動作では、各力データと各関節位置座標データを簡易的に計測することで、各関節に作用する力を推定できることが分かった。また、地面から身体に作用する力は、姿勢の取り方によって各関節に分配される。よって、身体の姿勢(フォーム)に関する議論が可能となることが示唆された。