2014年度 森基金研究者育成費 研究成果報告書

研究課題名
モバイルセンシングにおけるプライバシ保護手法
氏名
皆川 昇子
所属
政策・メディア研究科 修士課程1年

背景と問題意識

様々なセンサが搭載されたスマートフォンなどのモバイル端末の普及に伴い,モバイルセンシングによるアプリケーションが注目されている.
モバイルセンシングでは,多くのスマートフォンから位置データ,環境データ(音,大気汚染度,…etc)やユーザ情報を収集する.
そして,収集したデータを解析することにより,空間の混雑度や環境の変化,感染症の分布などの統計情報が,データを提供したユーザに共有される.
しかし,このようなアプリケーションにおいてユーザ数が少ない場合には,得られる統計情報の質が低下してしまう.
一方で,使用されるデータはユーザ自身や周囲の環境,ユーザの行動に関わるデータであり,プライバシの侵害が懸念される.
したがって,一定以上のユーザ数を確保しセンシングを行うためには,ユーザのプライバシを保護する仕組みを構築することが重要となる.

提案手法

上記の問題意識を踏まえ,モバイルセンシングにおけるプライバシ保護手法MDNS [1] を拡張したHidden-MDNSを提案する.
Hidden-MDNSにおいて,モバイル端末側は,センシングデータと異なるデータ(プライバシ保護処理済データ)をサーバへ送信,サーバ側は,プライバシ保護処理済データの集合から統計情報を再構築する.
このとき,センシングデータそのものはモバイル端末外へ送信されないため,ユーザのプライバシが保護される.
また,Hidden-MDNSは,プライバシ保護処理済データの選択方法を工夫することにより,既存手法MDNS [1] ,Negative Surveys [2] と比較し統計情報の再構築精度を向上させる.
一方で,再構築精度とプライバシ保護レベルはトレードオフの関係にある.
このため,統計情報の区分数(カテゴリ数)やモバイルセンシングへの参加者数(サンプル数)により,MDNS ,Hidden-MDNS,Negative Surveysを使い分け,適切なパラメータ値を決定する必要がある.
したがって,アプリケーション開発者の利用手法の選択とパラメータ設定を支援する機能を提案する.

研究成果

【国内研究会での口頭発表】
・[奨励講演]統計情報の取得を想定したモバイルセンシングのためのプライバシ保護手法. 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 114, No. 166, pp. 1-5, 2014.
・プライバシ保護手法Negative Surveysのためのパラメータ設定機能. 電子情報通信学会技術研究報告. Vol. 114, No. 418, pp. 43-48, 2015.

【国際学会でのポスター発表】
・Privacy-Aware Negative Surveys with a Hidden Category in Mobile Sensing. In Proceedings of the 11th International Conference on Mobile and Ubiquitous Systems: Computing, Networking and Services (MOBIQUITOUS '14). pp. 387-388, 2014.

参考文献

[1] Michael M. Groat, Benjamin Edwards, James Horey, Wenbo He, and Stephanie Forrest. Enhancing privacy in participatory sensing applications with multidimensional data. In Proceedings of the IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications (PerCom), pp. 144–152, 2012.
[2] Fernando Esponda and Victor M. Guerrero. Surveys with negative questions for sensitive items. Statistics & Probability Letters, Vol. 79, No. 24, pp. 2456–2461, 2009.