1.    研究背景                                   

スマートフォンの普及に伴う多様な情報が蓄積される中で、ユーザーのプライバシーに係るリスクが増大している。そのようなリスクの増大に対して、マーケット事業者(プラットフォーム事業者)が、アプリ開発事業者がアプリを登録する前と登録した後で、アプリ開発事業者に対して自律的に規制を行っているといった現象がみられる。

プラットフォーム事業者が、どのようなメカニズムで規制を行っているのかを明らかにすることは政策的判断をする上で重要である。そこで、プラットフォームの事前規制は、いかなる条件で、どの程度の規制水準に決定されるかを明らかにすることを目的とする。

 

2.    分析の枠組み                                 

Rochet and Tirole(2006)Two-side markets モデルを拡張して、プラットフォームによる事前規制が行われるメカニズムを明らかにした。

 

3.    研究成果                                   

 本研究の結論は以下の通りである。

「供給者数の変化によるユーザー数の変化」が小さい(非弾力的)場合、規制によって供給者数は減少するが、間接的なユーザー数への影響が低いので、規制の費用が増えても、利益を増加させることができることから、間接的ネットワーク外部性が存在しない場合に比べて「規制の水準」は大きくなる。

一方で、「供給者数の変化によるユーザー数の変化」が大きい(弾力的)場合、規制によって供給者数は減少するが、間接的なユーザー数への影響が高いので、規制の費用が増えると、利益を増加させることができないことから、間接的ネットワーク外部性が存在しない場合に比べて「規制の水準」は小さくなる。

 

4.    今後の課題                                  

今後の課題としては、価格が外生的に与えられていると仮定していること、規範的な分析を行えていない、プラットフォームの競争環境の違い、動学的なモデルの構築が挙げられる。

 

5.    参考文献                                   

Rochet, J.-C., & Tirole, J. (2006). Two-sided markets: a progress report. The RAND Journal of Economics, 37(3), 645–667.