2014年度森泰吉郎記念研究振興資金 研究成果報告書

政策・メディア研究科 修士課程1年
所属プログラム BI
ログイン名 toki
学籍番号 81424625
氏名 土岐 珠未

研究テーマ
がん幹細胞維持における小胞体ストレス応答の役割

研究概要
がん幹細胞を選択的に阻害するとしてKresoらにより報告された,低分子化合物PTC-209を用い,既に報告されているいくつかのがん幹細胞マーカーを評価した.また,マーカー分子に対するsiRNAの導入による,UPR関連分子への影響,および,細胞内ストレスを与え,UPRを誘導した際のがん幹細胞マーカーへの影響を観察し,がん幹細胞・UPRの双方の視点から考察を行った.まず始めに行った検討により,化合物 PTC-209 を投与した細胞は,低グルコース環境などのストレスに暴露された細胞と,タンパク質・mRNAレベルで高い類似性を示しており,Activating transcription factor 4 (ATF4)の発現を誘導するなど,UPRと類似したメカニズムの一部を共有しているのではないか、との予測を立てた.しかし、ATF4の発現上昇はUPRを介さない,別の経路であるGeneral control nonderepressible 2(GCN2)のリン酸化により誘導されていることを新たに見出した.また同時に,幹細胞マーカー分子として知られる,7回膜貫通型たんぱく質 Leucine-rich repeat containing G protein-coupled receptor 5 (LGR5 ) 他CD44 antigen precursor variant9(CD44v9)は,化合物作用により引き起こされる細胞内ストレスで,発現が顕著に低下し易い分子であることを新たに見い出した.これにより,LGR5及び CD44v9 の発現は,必ずしもがん幹細胞の有無に直結しない可能性が考慮された.

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研究成果報告書