2014年度 森基金 研究成果報告書
バイオ燃料生産性向上に向けたEuglena gracilisの網羅的遺伝子発現解析
政策・メディア研究科 修士課程2年(BI所属)
吉田 勇太
Student ID: 81325285
要旨
単細胞真核生物 Euglena gracilis (和名: ミドリムシ) が生産する貯蔵脂質ワックスエステルは,工業的に精製することでジェット燃料として利用できるためバイオ燃料リソースとして期待される.このE.gracilisは好気条件下で光合成により独立的に炭素同化を行い,この生物独特の貯蔵糖パラミロン (β-1,3-グルカン) を細胞質に蓄積する.この後,嫌気条件下に置かれると、パラミロンを分解し,ミリスチルミリスチン酸(14:0-14:0)を主成分とするワックスエステルを細胞内に蓄積する.このパラミロンからワックスエステルへのユニークな合成の過程において,エネルギー消費を伴わず,解糖系での基質レベルのATP獲得が可能であるため,この合成経路は『ワックスエステル醗酵』と呼ばれる.その他にもE.gracilisはバイオ燃料生産に有用な環境耐性を複数持つためオイル生産生物として有望視されている.しかし,ワックスエステル合成酵素やパラミロン合成酵素などのワックスエステル発酵経路に関与する酵素やその調節メカニズム,そして核ゲノム配列などが依然として不明であり,遺伝子レベルでの研究の遅れが大きな問題の一つとしてあげられる.そこで本研究では,RNA-Seqを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行うことで,ワックスエステル発酵調節メカニズムの解明を目的とする.好気条件・嫌気条件で培養したサンプル間での発現量比較を行ったところ,有意に発現変動している遺伝子のなかからいくつかのワックスエステル醗酵経路に関する遺伝子が見つかり,それらのwet解析を行うことで有意に蓄積量が変化する物質が存在することを確認した.
Keyword: Euglena,バイオ燃料,ワックスエステル醗酵,パラミロン,RNA-Seq,遺伝子発現変動解析
国際論文誌投稿前のため詳細は控えさせていただきます。
研究業績
・ポスター発表
吉田 勇太, 荒川 和晴, 冨山拓矢, 冨田 勝, 石川 孝博. (2014) “独立/従属条件におけるEuglena gracilisの網羅的遺伝子解析”, 第30回ユーグレナ研究会, 奈良. (若手優秀発表賞受賞)
吉田 勇太, 荒川 和晴, 冨山拓矢, 冨田 勝, 石川 孝博. (2014) “様々な培養条件におけるEuglena gracilisの網羅的遺伝子解析”, 日本分子生物学会2014, 横浜.
・口頭発表
第47回 日本原生生物学会 仙台大会 若手の会企画シンポジウム 「真核生物のスーパーグループを渡り歩く」招待公演, 仙台, 2014
「ワークショップ 生命の起源・進化・本質」 “様々な培養条件におけるEuglena gracilisの網羅的遺伝子解析”, 日本分子生物学会2014, 横浜.