2015年度森基金報告書

政策・メディア研究科 後期博士課程|EG|#81549049|清水信宏

エチオピア・ティグレ州における建築的地域資源の成立


■研究の概要

 エチオピア・ティグレ州では、古代より石造建築文化が育まれてきた。どのような建築がどのように造られてきたのかを明らかにした上で、関連する建築物・技術の活用・保護をどう行なっていくのかを探求することが本研究の目的である。まず、対象として「もの(建築物)」「ひと(職人・住人)」という軸を設定し、建築ドキュメンテーションやインタビュー、文献調査を通じて、構法・建築技術・エレメント・材料供給・建設プロセス・計画・職能にアプローチしている。


■今年度のフィールドワーク

 今年度のフィールドワーク(2015年11月27日〜2016年1月6日)では、これまでの成果の学会発表、州都メケレ周辺の現地職人へのインタビュー調査、次年度以降調査を行なう新規対象エリアでの事前調査を行なった。

 インタビュー調査は、これまでの情報提供者への追加調査と新規の情報提供者への調査を含んだもので、質問項目は、<情報提供者に関する基本情報><ビルディング・エレメントに関する用語の整理><空間の構成とそれに関する用語><伝統的な寸法体系><建築と敷地の計画性><建築のディテール(基礎・壁面・天井・屋根)と石材のサイズ><石積みの技術><道具><メンテナンスと建設期間、建設に関わるセレモニー><建築のドローイングと現場での実測><職人と施主の間での議論><材料とその供給><職能><教会と大広間の建築の計画について><教会と大広間の建築の建設について>に関するものをそれぞれ設定した。用語に関しては特に、職人ごとに認識が異なっていることが分かってきたので、今後どのように分析するのか検討の必要がある。

 建築のドキュメンテーションにあたっては、実測とそのデータ化、および建築の観察を行ない、またインタビュー調査との関連性も踏まえ、考察を試みている。今後、より個別の目的と状況に応じた多様なドキュメンテーションのしかたについても深めていくものとしたい。

 また、新規対象エリアの事前調査として、アビ・アディへ赴いた。これまで調査を行なってきたメケレ周辺の矩形の住居とは、構法は類似しているものの、平面は円形形状をしたものが目立って存在しており、その違いは顕著である。次回の渡航の際には、建築を選んで実測、インタビュー調査も実施していく予定である。

 次年度以降、今年度行なわれた調査をもとに、現地にて追加調査を行ない、学会論文および博士論文の執筆に取りかかっていく。


■対外発表

[学会発表] 以下に、本年度行なった学会発表について、間接的に関連するものも含めて記す。

○清水信宏、エフレム・テレレ、青島啓太、三宅理一「グンダ・グンド修道院旧聖堂修復に向けた外構修復の報告と、地域の伝統建築技術」、日本ナイルエチオピア学会第24回学術大会、日本ナイルエチオピア学会、藤女子大学(札幌)、2015年4月(最優秀発表賞受賞)

○青島啓太、清水信宏「エチオピアにおける建築及び遺産保護教育の諸問題」、日本ナイルエチオピア学会第24回学術大会、日本ナイルエチオピア学会、藤女子大学(札幌)、2015年4月

○Nobuhiro Shimizu, Riichi Miyake, Rumi Okazaki “A Study on the Urban Formation Process of an Ethiopian Hillside City and its Adjustment to Current Urbanization -Case Study on Enda Meskel and Kebele 14 Area at Mekelle City, Tigray Region”, 19th International Conference of Ethiopian Studies, The University of Warsaw (Warsaw, Poland), Aug. 2015

○Nobuhiro Shimizu, Riichi Miyake, Alula Tesfay “Traditional House and its Social Form at Mekelle: From Plan and Construction Process of Traditional House”, International Conference of the History of Arts & Architecture in Ethiopia, Mekelle University (Mekelle, Ethiopia), Dec. 2015

○Alula Tesfay, Nobuhiro Shimizu “The Restoration of Debre-Garzen, Gunda Gundo Monastery, Tigray, Ethiopia”, International Conference of the History of Arts Architecture in Ethiopia, Mekelle University (Mekelle, Ethiopia), Dec. 2015


[査読付きプロシーディング] 今年度印刷された査読付きプロシーディングを以下に記す。

○Nobuhiro Shimizu “An Analysis of the Construction Method of Emperor Yohannes IV’s Buildings in Tigray Region, Ethiopia”, Cultural Landscapes of Ethiopia: Conference Proceedings, Mekelle University Printing Press, pp.27-38, 2015