2015年度森基金　研究成果報告書

マクロファージの細胞内代謝は自然免疫応答を制御する

政策メディア研究科 修士課程1年 (BI所属)

伊藤　優太郎

Student ID : 81524123

 

マクロファージはパターン認識受容体を介して病原体等を認識し，炎症性サイトカインを産生することで自然免疫応答の活性化を担う重要な免疫細胞である．近年の研究から，マクロファージの自然免疫応答の活性化には細胞内代謝動態のリプログラミングが重要であることが明らかとなってきた．すなわち，マクロファージの抗原認識時の細胞内代謝動態を理解することで，人為的な自然免疫応答の制御が可能になると考えられる．しかし，細胞の代謝経路は多岐にわたることから自然免疫応答との関連性が不明瞭な代謝経路が多く存在する．われわれはこれまでに，キャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析計 (CE-TOFMS)を用いてマクロファージのLipopolysaccharide (LPS)認識時の細胞内代謝動態を網羅的に解析し，ある代謝経路の代謝物が蓄積することを明らかにした．そこで本研究では，この代謝経路を制御するある代謝酵素に着目し，自然免疫応答および細胞の代謝動態との関連について詳細に検討した．その結果，ある代謝酵素をノックダウンすると，LPS刺激により誘導されるIfnbの発現が抑制されることが明らかとなった．一方で転写因子のNF-κBによって誘導されるTnfの発現が増加することから，・型インターフェロン産生に関与する機構が抑制されていることが示唆された．マクロファージの産生するIFN-βは抗ウイルス作用や適応免疫応答の誘導に重要であることが知られており，本研究成果は抗ウイルス薬やワクチン開発における創薬ターゲットに繋がることが期待される．

 

＊国際論文投稿のため詳細は控えさせていただきます

 

Keywords : マクロファージ，自然免疫応答，メタボローム解析，1型インターフェロン

 

研究業績

・ポスター発表

伊藤優太郎，田畑詳，冨田勝，福田真嗣　内毒素耐性時のマクロファージ様細胞株における代謝動態の解明 “日本分子生物学会2015”

・口頭発表

伊藤優太郎，田畑詳，冨田勝，福田真嗣　マウスマクロファージ様細胞株の内毒素耐性時における代謝動態の解明 “第9回細菌学若手コロッセウム”