2015年度森基金活動報告書

所属:政策・メディア研究科 CI 修士課程二年
氏名:加藤慶之
学籍番号:81424287
ログイン名:ysyk

【研究課題名】時系列メディアにおける動的特徴の媒介的記述手法

研究概要

本研究の目的は、音楽をはじめとする時系列メディアの動的な特徴を他のメディアを媒介として記述する、クロス・メディア問い合わせモデルを実現することである。本研究では特に、楽曲の目に見えない音楽的な特徴を色彩を通じて指定可能とするモデルの開発を行う。生活空間の情報化により、音楽はより我々に近しいメディア・コンテンツになったが、ユーザが自身の曖昧な要求を満たす楽曲にたどり着くことは依然として困難である。本モデルは、ユーザが具体的な音楽の情報を提示することなく、望んだ音楽の印象的な特徴を問い合わせとして表現することを可能にする。音楽について特別な知識や技能を持たないユーザにとって、望んだ音楽の情報を例示することは非常に困難である。本モデルの特徴は、音楽や画像などの異種メディアの「動き」を相互変換するメカニズムにある。本メカニズムは、メディアデータの物質的状態変化量を、特徴空間内において相対化された距離として導出することで、異種メディアの「動き」を比較可能とする。しかしながら、距離の概念は量的であり質的ではないため、特徴空間内における具体的なメディアデータについて非決定的である。そのため、本モデルでは、異種メディア変換メカニズムの双方向性を利用し、集合知的手法による距離とメディアデータとの関連性計量機構を備える。本モデルの具体的なシステムとして、複数画像内における色彩変化によって楽曲の音楽的変化を記述する、クロス・メディア音楽検索システムを開発した。

活動報告

今年度前期は、一年次より取り組んできたクロス・メディア楽曲検索システムにおけるメディア分析機構の設計に取り組んだ。本分析機構は、試行錯誤におけるユーザの意思決定を補助するために、問い合わせと対象コンテンツの相関度を測る距離系をユーザの入力に応じて動的に更新する。具体的には、入力された問い合わせの特徴から類似点と相違点の推移を抽出し、候補となる対象コンテンツの範囲を変化させる。これにより、問い合わせと結果表示による入出力を対話的なメディア表現プロセスとして行うことが可能になる。

今年度後期は主に、修士課程の間二年間取り組んだクロス・メディア楽曲検索システムの研究コンセプト、計算手法、実装について包括的にブラッシュアップを行い、修士論文の執筆を行った。