森基金研究成果報告書

鵠沼ハッピーボード: 携帯端末を用いた住民参加型の高齢者見守りシステム

政策メディア研究科 修士課程1年
古川 侑紀

概要

近年,少子高齢化社会が進む日本では,コミュニティ内でのコミュニケーションの減少や,独居老人の孤独死などが大きな問題となっている.これまでの多くの高齢者見守りシステムに関する研究やシステムが提案されてきたが,それらは一方的に一人の高齢者を監視するシステムであった.本研究では,ユーザは「笑顔」「運動」「健康」の3種類のミッションを達成していき,それらの情報を共有することにより,コミュニティの活性化に繋がるような高齢者見守りシステムである「鵠沼ハッピーボード」の構築に取り組んだ.

鵠沼ハッピーボード

鵠沼ハッピーボードはiPhone上で動作する高齢者見守りシステムアプリケーションである.本アプリケーションをユーザに使用してもらうことにより,ユーザから様々な情報が慶應義塾大学内のサーバに送信される.それらの情報がきちんと送信されているかどうかを確認することで,結果的に高齢者の見守りシステムとすることが可能となる.ゲーミフィケーションの技術を取り入れることで,よりユーザに楽しみながら使ってもらうことを目的とした.ユーザには毎日「笑顔」「運動」「健康」の3種類のミッションが通達される.(図1)

mission
図1:ミッションの例

ミッションを達成することでユーザはポイントを獲得することが出来る.またそのポイントを地域内のユーザと競い合うことが可能となるため,ユーザにより本アプリケーションを使って貰えるような狙いがある.

笑顔

ウィリアム・ジェイムズの言説で、『人は幸福であるが故に笑うのではなく、笑うが故に幸福である』と言う言葉がある.笑顔になることがユーザの幸福感につながると考えられている.このように普段の生活の中で笑顔になるということはとても大切な意味を持つ.本アプリケーションでは笑顔の写真を撮影し,その写真を地域内での友人に共有する.共有された笑顔の写真を見た友人は,その写真によって笑顔になる.このようにして地域内で笑顔を増やしていくことによって,コミュニティの活性化が可能となると考えられる.

運動

iPhoneに内蔵されている歩数計や,Fitbitなどの活動量計を用いることでiPhone上で歩数や,活動量を管理できる.これらの情報を記録し,歩数や活動量を地域内の友人と競争することによって,より運動をしてもらうな狙いがある.

健康

Withingsの体重計や血圧計を用いることで,ユーザは体重や血圧を測るだけでiPhone上でデータを確認できる.本アプリケーションを使用することで測定した値が確認でき,過去の測定値も遡って確認することが可能である.これらの情報はプライバシーに関わるため,他のユーザと情報の共有は行わない.

研究成果

2015/12/21より藤沢市の鵠沼地区町内会の高齢者9名に使用してもらい,実証実験を行っている最中である.実験期間は3ヶ月間の予定である.