慶應義塾大学 政策・メディア研究科
森基金研究成果報告書
ICTを用いた社会インフラ整備の効率化

政策・メディア研究科 修士課程1年
河崎 隆文

概要

古くから日本の交通は車社会として発展している。そのため、車や歩行者が使用する道路は人々のライフラインとして非常に重要である。しかし、幹線道路と言った道路の多くは高度経済成長期に整備され日々老朽化が進行している。 特にこれからそれらの道路が特に整備を注意深く行うべきである築20年を迎えるため社会インフラ整備には多くの投資が必要となる。道路の管理は所有する各自治体に任されるため自治体の負担も大きい。 そのため、これらの道路の整備を効率的かつ安価に行うことが今の社会に求められている。 以上のことから本研究ではその道路点検に着目しICT技術による効率化を図る。道路自体の点検に関する研究は様々な既存研究で行われていることから、本研究ではその道路に塗装された路面標示にまず着目した。路面標示は道路上に塗装された標識を指し、運転手や歩行者に危険や指示を行う役割がある。 しかし、道路上に塗装されるという性質上、日々の交通や天気の影響によって劣化がしやすく効果が十分に発揮できていないものも多い。これによって十分な安全が確保できなくなってしまう危険性もある。本研究ではこの路面標示の点検作業を汎用カメラと車両によって容易に行う方法を提案する。 今回は画像処理によって路面標示の擦り切れを検出する手法を作成した。

アプローチ

カメラを用いて路面標示の状態を収集する場合の要件として重要なものが2つあげられる。1.路面標示の状態が鮮明に撮影できること。2.撮影時に周囲のプライバシーを十分に確保すること。の2つである。 画像処理を用いるため、路面標示自体が撮影できていないと路面標示の検出すら行えず擦り切れを検出することは難しい。そのため、路面標示の状態を鮮明に撮影できる箇所にカメラを取り付けられることが求められる。 また、道路整備を行うのは道路を所有する各自治体であるためそれらの点検データを管理する上で道路撮影時に十分に周囲のプライバシーを確保することが必要である。ここでのプライバシーとは道路を歩行する人や運転手、ナンバープレートを指す。 以上の2点を今回はカメラを車両の底部に取り付けることで解決した。実際に取り付けた際の写真を図1に、その時に取れた画像を図2に示す。カメラが路面に近づくことで通常のカメラでは視野角が狭くなり十分ではないと判断し天球カメラや半天球カメラを使うこととした。 このようにして撮影した画像から輝度に着目し、路面標示のみを検出し、さらに路面標示を構成する画素数から特徴を見出すことによって路面標示の擦り切れ検出を行った。


図1: カメラを取りつけた様子


図2 : 取り付けたカメラで撮影した様子(反天球カメラ)

今年度の成果

撮影した画像をPCで処理行う部分はできたため、これをより実環境での利用を想定し、これらの処理を撮影した画像をRapsberry piなどのマイコンによってリアルタイムな処理を行い結果のみをサーバーへ送信するシステムの構築を目指して実装を行っている。 また、Mobiquitous2015の併設WorkshopであるIWWISS2015にて論文の投稿及び口頭発表を行った。