3次元地図を用いた避難行動シュミレーションモデルの構築
平成16年3月
総合政策学部
専任講師・石橋健一
1.研究のねらいと目的
政府の中央防災会議で、東海地震・南海地震・東南海地震についての様々な事前の対策が協議されている。特に、地震に伴って発生する津波については到達時間や波高の分散が大きいため、津波に対する住民の危機意識は不足していると言わざるを得ない。そこで、同会議でも、地震に伴って発生する津波については注意が払われ、到達時間や波高の推定が行なわれている。一方で、津波到達地域の住民を迅速かつ安全に避難地域に避難させるためには、綿密な避難誘導計画が必要である。そのためには、事前に住民の避難行動を予測した上で、計画を立案することが必要であるが、実際には、数万人規模の住民の避難行動について個別避難者の状態を考慮し、正確に予測することは未だ実現されていない。そこで、本研究では、エージェントシミュレーションモデルを用いて、避難者の環境からの情報獲得行動をモデル化することを目的とする。具体的には、片瀬海岸の1部を3次元地図を用いてコンピュータ上に実装し、避難者の情報獲得行動を組み込み、情報獲得行動に基づく避難モデルの構築を行なう。
2.3次元地図を用いた避難通路認知実験
2−1.実験概要
平成16年2月20日(土)、21日(日)に湘南モールフィル(藤沢市)において3次元画像を用いた避難通路認知実験を行った(実験の詳細は、表1を参照)。
図1に調査回収票について性別の分布を示したものを表す。サンプル数は153票を回収することができ、性別に構成を見てみると約1/3が男性、約2/3が女性という構成になった。
また、サンプルの年齢別分布を表したものが図2である。10代、30代の回答がそれぞれ約20%強を占めていることがわかる。ついで40代が続き、特徴的なのは10歳未満(小学生)のデータが約10%を占めている。しかし、いづれの年齢層も被験者があることがわかる。
2−2.実験内容
実験項目は、道路幅員(3種類)、避難者方向(3種類)、避難歩行者密度(3種類)を組み合わせ、計27種類の実験を行った(図3)。
2−3.実験結果
27ケースの認知実験の結果を以下に示す(図4〜図30)。
3.結論
本研究では、3次元CGを用いて避難者の認知行動について調査を行い、道路幅員、避難者の方向、避難者歩行密度のいづれもが、避難者通路選択に有意な影響を与えていることを明らかにした。