1. 概要
本研究では、映画の視聴環境を映画館以外の生活に密着した環境にシフトさせることで、新しい映像文化とビジネスを創出していくことを目標とした。コミュニティ型シネマ(Community-based cinema)を例として21世紀型デジタルシネマとしてユビキタスシネマを位置付けて研究開発及びコンテンツの試作を行った。
また、高速インターネットを活用した映像コンテンツの模索を実施し、映画館ではない場所における映像コンテンツの可能性を研究した。
2. コミュニティ型シネマmopieの開発
本研究で開発したmopieは、映像SNSとして考えることも出来る。ユーザーは携帯電話のカメラを利用し、街を歩きながら映像を撮影する。それと同時にGPS機能を利用し、位置情報を取得、映像とその位置情報を合わせてサーバーに転送する事により、サーバーは映像を地図上に自動的にマッピングを行う。複数のユーザーが同一システム上でこの行為を繰り返す事によって、映像の地図は位置情報を元に繋がる事が可能となる。
従来の映像編集では編集者が時間や場所、その他多くの撮影状況を理解した上で視聴者に不自然さを感じさせない様に映像を並び替えていく行為が必要となる。しかしこのシステムでは映像に位置情報というメタデータを付加する事で映像と映像をつなぎ合わせる一種の「編集作業」を自動化し、利用者が映像を扱う上で感じる煩わしさを解消している。これによりこれまでにない、手軽に映像を扱う事が可能なコミュニケーションシステムを実現している。
また、ユーザーは蓄積されたデータを閲覧する事によって街を追体験するだけではなく、別のユーザーがアップロードしたデータを閲覧し、同じ場所の違った視点を見たり、全く新しい街を歩く疑似体験したりする事が可能となる。
3.Mopieによるデモコンテンツ
Mopieシステムは、鎌倉市の中心部を1つのケースとしてデモコンテンツを作成した。
鎌倉という土地は、町並みそのものが観光要素を持ち、その一方で古来より区画整備された道は比較的単純であり、デモ環境として最適であると判断した為だ。
ORFでのデモの結果得られたフィードバックを元に、UI の改良、機能の充実化、プログラムの最適化を行い、2月に都内にて発表を行った結果、主に以下の様なフィードバックを得る事が出来た。
- 映像である事の優位性の評価
- さらなるユースケース発掘の重要性
- 携帯電話で完結するシステムへの要望
- 携帯電話以外のディバイスでの参加形態への要望
GPSを利用した写真を集積する同様のシステムが既に多く知られている中、映像ならではの魅力を引き出した本システムへ一定の評価 を得る事が出来た。
4.高速インターネットを活用した映像コンテンツの協調
インターネットで2拠点を結び、映像コンテンツを同時に体感する実験を南カリフォルニア大学とSFCを結び実施した。2拠点で映像を同時に体感する難しさと特徴を抽出した。今後の複数拠点を活用した映像協調体感を実現するコンテンツ研究の準備研究としての知見が得られた。
5.結論と今後の展開
本研究では、映画館以外の場所での映像視聴環境に関する研究としてコミュニティ型シネマのシステム開発と高速インターネットにおける映像コンテンツの協調に関する研究を行った。また、本格的な研究を産学連携で実施するための調査と調整を行った。
6.予算報告
予算使用詳細は、下記の通りである:
備品(PCなど) | 297,012.- |
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書籍 | 21,723.- |
消耗品(材料など) | 410,810.- |
謝金 | 40,000.- |
旅費・交通費 | 208,500.- |
その他(レンタルなど) | 21,955.- |