研究課題名:パブリック・スペースの音響デザイン

氏名:岩竹 徹

所属:慶応義塾大学 環境情報学部 教授


研究の概要
私の研究室で行って来た研究テーマの一つに、公共空間に於けるインテリジェントな
音環境デザインがある。この研究成果を応用し、実際に成田国際空港に於いて、
インタラクティヴな作品を設置するために必要な予備的な研究調査活動を、
成田国際空港株式会社の諸関係部門の皆様の協力とサポートを得て行った。


活動の経緯
このプロジェクトの発端は、2010年の2月に、成田国際空港株式会社の業務推進部門の
CS推進担当者から頂いた一本の電話である。内容は成田国際空港に於ける音響デザインに
関するものであった。これをきっかけとして、2010年度の春学期には数度に渡り担当者との
間でメールによる調整が行われ、秋学期に入ってから下記の日程で成田国際空港株式会社側
との間で会議が行われた。

2010 年9月29日:SFCにて初会合
2010 年11月19日:成田国際空港の現場視察と会議
2010 年12月16日:慶応三田校舎にて会議
2011 年2月9日:成田国際空港株式会社、丸の内オフィスにて会議
2011 年3月23日:成田国際空港にて、基本コンセプトの提示とプロトタイプのデモ (予定)


活動内容
会議の参加者は毎回多少のメンバーの変動はあるが、SFC側からは私と岩竹研究室の学生
(学部、、修士、博士) が参加し、成田国際空港株式会社からは、業務推進部門CS推進室、
経営企画部門、空港運用部門の担当者が毎回4〜7名程度 (氏名は割愛) 参加した。
会議の主な内容は、国際空港に於ける望ましい音響デザインコンセプトの策定へ向けての
意見交換であり、普段は見る事ができない様な空港の空間を実際に体感する事も含め、
非常に有意義なものであった。

公共的な大規模空間のサウンドデザインは、アーティストやデザイナーにとっては非常に
魅力的であるだけでなく、多くの課題を含むものでもある。そのため、成田国際空港側との
会議と並行して、岩竹研究室内で定期的な会合を開き、学生諸君とのディスカッションに
多くの時間が費やされた。これは大学で行う研究/教育/創作のプロセスを推進する上で
非常に効果的であった様に思う。実際の作品制作と設置はまだこれからなので、来年度には
どの様な展開が待っているのか、非常に楽しみである。


来年度の予定
2010 年度中に基本コンセプトをまとめ、成田国際空港株式会社の合意を得る予定である。
2011 年度からは、定期的に成田側との会議を行いながら、空港に設置するための作品の
制作を開始する予定である。実際に空港に設置する時期は、2011年の夏頃を予定している。


成果の公表など
岩竹研究室のプロジェクトに参加している学生諸君の作品は、そのすべてがプロのレベルに
達している訳ではないが、ドクターの学生諸君は既にクリエイター/研究者として国際的な
活動を展開している。従って創作のテーマごとに学生数名によるチームを作り、各自の力に
応じて可能なレベルで貢献を行うのがよいであろう。制作プロセスで得られた知見に関しては
作品発表だけでなく国際学会への論文の投稿なども、積極的にエンカレッジしたい。
このようなプロジェクトの実行と達成による教育的な効果は非常に大きいと予想される。


今後への展望
国際空港の様な、公共的な生活空間に設置される作品の創作活動は、今後の社会に於ける
芸術やデザインの持つ意味/価値を考える絶好の機会になると考えられる。SFCの大学院名が
「政策・メディア」 である事を最大限に活かせる方向へ、今後の活動を開いていく事ができれば
大変にすばらしい事と思われる。

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