2010年度SFC研究所プロジェクト補助 報告書

 

研究課題

子供の心理社会的健康と家庭の役割と学校建築との関連

 

研究代表者;中山直子 看護医療学部 助教

共同研究者;首都大学東京 倉斗綾子 客員研究員

      首都大学東京大学院 星 旦二 教授

      首都大学東京大学院 小泉雅夫 教授

 

 

T.はじめに

わが国の児童・生徒の健康問題は,多岐にわたっている。思春期から青年期にある子どもたちには,いじめや不登校,生活習慣の乱れや喫煙,飲酒,薬物乱用の問題に限らず,リストカットや心の健康に関するものなど,多くの健康課題がみられている。

また,子供たちを取り巻く家庭環境は変化し,世帯構造も核家族世帯が増加傾向で,三世代世帯は減少傾向であり,家庭における教育機能の低下や家族との関係性なども変化していると考えられ,家庭教育のみならず地域や学校を含めた包括的な取り組みが必要であるといわれている。

そ の中でも子どもたちが多くの時間を過ごす学校や学校の居場所との子どもたちの心理社会的な健康については,ほとんど報告されていない。本研究では,小学校 の新築プロジェクトと,小・中一貫校への改築プロジェクトとともに,子どもたちの健康と家庭での役割についての相互関係性を明らかにすることを目的とす る。

 

 

U.研究意義

子どもたちのQOLを 考えるにあたり,多くの時間を過ごすことになる学校での生活や学校の役割が大きく影響することは明らかである。本研究では,児童・生徒の心理社会的・身体 的な影響やその効果について,保護者や家庭・学校との関連とともに,学校建築との関連をみるといった新しい試みである。

 学校を施設としての建物という評価だけではなく,子どもたちが楽しく健康に生活できる場としての学校,また,それらの影響や効果について分析することは,今後の学校建築等の計画をするにあたり,新しい視点となり,非常に価値の高いものであると考える。また熊本県A市における施設一体型の小中一貫校の学校建築コンセプトが,「場所をつなぐ」「子どもをつなぐ」「地域の人々をつなぐ」といった「つなぐ」であり,子どもたちや学校・家庭・地域への影響や効果について,全国へ発信することができる。

 

 

V.子どもの健康と学校との関連

 まずは,文献検索を行った。学校建築そのものと子どもの心理社会的な健康に関する文献はほぼ見当たらない。文献検索はCiNiiを用いて20101227日に行った。学校,居場所,建物,健康のキーワードで検索した。いずれをも含んだ先行研究は報告されていなかった。文献のキーワードの一覧は表のとおりである。これらの文献のうち,12の文献について,検討した。

 

表1 学校建築と子どもの健康に関するキーワード検索結果